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スレッドNo.5290

根無草と浮雲  松本福広

私は
両親の期待に応えられませんでした。
世間の期待にも応えられませんでした。
親には
結婚して子どもを育てて
家族を継いでいくことを
求められました。
世間には
ひとつの職場で成果を出し続けて
併せて後輩を育てることを求められました。
私は
結婚も、子どももいませんし
職場も転々としています。
誰かはそんな私を
根無草と呼ぶでしょう。

私の環境がそうだっただけで
世間は広いものです。
そういった期待のような
声をかけられなかったのか
無視してきたのかは存じませんが
どこ吹く風で独り身を
悠々自適に過ごす方もいました。
その方を浮雲と例える人もいました。

根無草と浮雲
水のように
形が定まらず
ままならない現世(うつしよ)を
揺蕩う根無草。
群れでありながら
一片でしかいられない私は
それならば、と
空に焦がれます。

永遠にしか見えない青色が
私には自由を約束しているように
思えるのです。
その中に散り散りに
好き勝手に形を作り
揺蕩う浮雲に焦がれてしまう。
心の有り様で
幸せが変わるのなら
そうでありたいと。

そんな浮雲氏から
「飲みに行かないか?」と誘われました。
もちろん、私は応じました。
浮雲氏にとっては気まぐれだったのでしょう。
いつもの心のように。
それでも、嬉しかったのです。
交わしたい杯は
私の中では
もう決まっています。

青空をロックで。
現世の様々を混ぜて
不透明になった白い氷を
たっぷり入れたグラスに
透き通る青をになみなみ注いで。
現世での
誰かの期待を
飲み込んでしまいましょう。
きっと
あなたが日頃育てている
自由の味が私にも感じられるでしょう。

編集・削除(編集済: 2025年03月11日 05:46)

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