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スレッドNo.530

銀の柄杓  朝霧綾め

夜になると空は
藍色の水で満たされ、
深い泉になる

白鳥、英雄ヘラクレス、鷲、冠
藍色の水面に映し出される
めくるめくばかりの物語

私は知っている
泉の北には
むかし誰かが落とした
銀の柄杓が沈んでいること

草むらに寝転んだまま
私は空に手をのばし
沈んでいる柄杓をとった

銀の柄杓で
泉の水をかき混ぜれば
星々が柄杓にぶつかり
からんからんと音がする

のどがかわいた私は
水を掬って
柄杓を口にもっていった

いたいほどの清冽さで
清水はのどに流れこむ
寝転ぶ私の唇から、こぼれた星々が
あごをつたい、草の上に落ちて
きらきら光る

のどが潤うと
私は空に手をのばし
柄杓をまた、泉に沈めた

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