ヒアシンスの家族 津田古星
青いヒアシンスの花が咲いたので
写真を送ると 息子が
「このヒアシンスは30年以上も咲いてすごい」
いえ、これはあなたが小学校の
理科の授業で育てた球根ではない
あの球根は庭の隅に埋めて忘れていた
十年以上経って
小さな花が咲いているのに気がついて
別の場所に移した
翌年から二月になれば
周りのイモカタバミを抜き
肥料も施した
年々花がたくさんつくようになり
園芸店にあるような豪華な姿を見せた
ある年 隣にもう一つ芽が出てきた
えっ ヒアシンスって増えるの?
球根が二つに分かれたのか
種が落ちたのか
どちらにしても嬉しい
なにか良いことがありそうな予感
翌年からは二つが並んで咲くようになった
良かったね友達ができて
さらに三年
豪華な花二本を底辺にして
三角形の頂点に
原種のような小さい花が一本
こっちは種で増えたんだね
花が咲いて受粉すれば
種が出来るのは当たり前
ヒアシンスも家族が増えるんだ
ところが昨年は一つも芽が出ない
どうしちゃったの?
四月になって土を掘り返してみたけれど
球根が消えている
ああ 長い間楽しませてくれたけど
何にでも寿命があるのだから
今年は?とイモカタバミを除けてみると
あった! 一つだけ
二月が寒かったけど芽が伸びて
花が咲いた
これは三つ目の球根があった所から出てきた
なんで一年休んでいたのか
まあ、そんなこともあるよね
根元にもう一つ つぼみが見える
これは子供?弟?
三十三年前の球根と隣の球根は消えたまま
「世代交代かな」と息子も言う