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スレッドNo.5343

魔桜(まおう)  松本福広

春うらら
うららかな青空の下で
桜がはらはら踊る。
しとやかな桜の色が
空だけではなく
心も彩なす。
晴れやかな景色なのに
どこか艶やかで
妖しい色香に
落ち着かない気持ちにもなる。

春はらら
危なげを孕んだ春の香りが漂い
ハレを装いつつ
ケガレをいざなうような
桜色の空を区切るように
菜の花畑が水平線をなぞる。
菜の花に
桜に
青色に
どれも鮮やかな色が
主張しているのに
調和して
春の華麗な刹那を孕む。

春きらら
桜の花びらは
短い春の彩りを
煌めかせる線香花火の
儚い火花なのかもしれない。
それにしては
青空のキャンバスを
全面に描く絵は
派手過ぎないかと
誰かが聞くかもしれない。

春をうたってきた
桜を愛でてきた
人間の歴史から見れば
私の視界に映る
今の映像は
瞬間的なものしか
とらえられない。
永遠に人々の心を
魅了し続ける魔力の源の
片鱗すら言葉にできないで。
それなのに
桜が秘めたる魔性に
流されるまま
締めの句点が見つからない散文を
私もいたずらに
乱れるままに
流れるままに
書かずにいられない。
春るらら

※埼玉県幸手市の権現堂堤をイメージして書きました。

編集・削除(編集済: 2025年03月18日 00:22)

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