象徴を描く 荒木章太郎
俺は画家の頭だ
象徴を描く
抽象画ではない
写実しても現実には触れられないと
やさぐれていた
愛されたことがないから
愛を描くこともできないと
燃えさかる山のように
心は揺れた
だが
象徴で水を描けば
山火事は鎮まる
これが魔法というものか
触れられぬ現実を
思考でなぞり
我を山に放ち
他者を思えば
愛を知ることができた
これが信じるということか
ただ 苦しいのは
余白がなくなることだ
揺らげ 悩め
炎よ 燃やせ
意味を加えながら生きる
これが人間というものか