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スレッドNo.5370

息子へ  まるまる

湯舟は
しばらく体を預けるだけで
私を芯から温めてくれる
時が来ると
ふわっと体のほどける感じ
私は お湯に溶けてしまう
至福

そうか
子どもの頃 父の言ってたのは
このことか
お湯から上がろうとする私に
まだまだ 温まっていないよ

わからなかった 
観たいテレビもあったし
もう冷たいところなんてなかった
もしかしたら
子供の体は小さくて
上から下まで温まるのに
父ほどの時間はかからなかったんじゃないかな
でも父にとっては
自分のメモリが 真実
子どもは 合わせるしかなかった

ふとそれを 思い出したのは
近所の小さな交差点
小さかった頃のうちの息子は
横断歩道のずいぶん前で
よいしょ と自転車からわざわざ降りて
青になるのを待っていた
 そんなに遠くじゃ人に当たるよ
 ぎりぎりまで来ていいんだよ
 そのたび降りたら遅くなるよ
そんな言葉をかけていた

何度目かのその時 息子は
ほんの少し声を荒げて 
 ここから先は 危ないんだよ
 坂道になってるんだよ

え そうなの?
確かにあった
横断歩道に差し掛かる所で
ほんのかすかな下りの傾斜
それは小さなキミと自転車にとって
全力で臨む関門だった
キミより力のある私には
まさかそうとは気にも留めずに
自分の正義を振りかざしていた

湯船からあがらせてくれなかった
あの頃の父と 同じだね

ごめんごめん
ひどいお母さん だったね
今さら謝っても もう遅い

これからのキミは
信号を待つ位置を決めるより
もっと大きな岐路に立つ
あの頃私がしたように
押し付けするわけには いかないね
そっと 見守るだけにするよ

自分で決めて進むんだよ
自分を信じて 自分の足で

少しは頼って欲しいけどね

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