3/11〜3/13までにご投稿分の評と感想です。 井嶋りゅう
3/11〜3/13までにご投稿分の評と感想です。ご投稿された詩は、一生懸命書かれた詩ですので私も一生懸命読ませていただいておりますが、上手に意味を読み取れなかったり疑問を書いたり頓珍漢な感想になったりする場合もございます。申し訳ございませんがそのように感じた場合には深く心に留めず、そんな読み方もあるのだとスルーしていただけると助かります。どうぞ宜しくお願いいたします。
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「根無草と浮雲」松本福広さん
松本福広さんこんばんは。
以前ご投稿いただいた「マヨネーズ工場」でしたか。今回の詩の5連目であちらの詩の展開を思い出しました。前回のアドバイスも引き続き今回に含みたいのですが、4連目までは違和感なく読み進めました。6連目も素敵なのです。引っかかるのは5連目でしょうか。5連目だけ色合いが違うように感じるのです。急に浮雲さんから誘われる設定になっていますが、4連目までの色合いの流れを汲むと、「いつか浮雲さんを飲みに誘ってみたいと思うのです」くらいでおさえる流れから6連目にいったほうが違和感がないように感じるのです。4連目まではたんたんとひとり語りで、根無草や浮雲が人物を紹介する例えで登場していたのに、5連目で急に命を宿しているかのような出現をする書き方になってますので、この部分に引っかかったのです。この詩はとても良い詩なんですが、5連目とそのほかがうまく融合されていないのだと思うんですね。アドバイスとしては上記のものか、あるいは、5連目にあるやわらかさをメインにして、最初から根無草と浮雲の会話にしてしまうという手もあります。もしかしたら松本さんは童話的な詩をお書きになる素質のあるかたなのかも知れません。私は今回の詩を読んで、逆に5連目に注目してみたいと思いました。5連目がもつやわらかさでもってもうひとつの「根無草と浮雲」を書かれて見ても面白いかもしれません。ひとつでも参考になったら嬉しいです。また書いてみてくださいね。
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「筑波の春」小林大鬼さん
小林大鬼さんこんばんは。大変お久しぶりですね。お元気そうで何よりでした。
さて、この詩は岩手県大船渡市の山林火災について書かれたものですね。火災と雪。その対照的なワードが色彩的なアプローチにも感じて、じっとりと良い詩でした。運転手から聞く災害と、タクシーという安全な場所にいる「私」との対比も、ある意味残酷が描かれているような気がして、ぼうっと余韻にひたりました。今年は全体的に雪予報が多いように感じます。なにかこう、閉じ込められていくような、行き詰まり感なども感じました。小林さん、またいつでもいらしてくださいね。
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「ヘビースモーク」喜太郎さん
喜太郎さんこんばんは。
まず冒頭の「あなたは私の中から選んだのは性欲」ですが、「あなたは」ではなく「あなたが」のほうがしっくりくるように感じました。さて。この詩は煙草を擬人化しているように読みました。この詩のいちばん気になるところは、煙草と性欲が繋がっているように書かれているところでしょうか。そこは私の中では繋がっているように感じません(どちらかというと食欲のほうが性欲に近いイメージで煙草は依存が主)が、喜太郎さんの中では繋がっているのでしょう、そして、繋がっていても良いのです人それぞれですので、が、「性欲」と書いてしまうより「性欲」なんだろうなと読み手が感じるように書かれてあったほうが、読み手の共感度つまり納得度が高まると思いますので、その辺をご再考いただけたら嬉しいです。今回は全体的に推敲回数をもっと増やした方が良いような気がいたしました。
ほぼラストで「あなたの寿命は私のモノになる」はとても良いと思いました。また書いてみてくださいね。
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「すみれ公園の桜」温泉郷さん
温泉郷さんこんばんは。
2本の桜の老体樹の一本が折れたのをきっかけに根元から伐られたというエピソード。記憶にありましたので調べましたところ、去年のちょうど今くらいに同じタイトルで投稿がありました。今回は続編という認識で宜しいのでしょうかね?申し訳ありませんが当時のテキストが見当たらなく細かいチェックが出来ませんでした。自分の評を読み返して、去年の詩とは今回は違う内容だと感じましたので、こちらはまた新たな詩ということで読ませていただきました。
去年一緒に写真を撮ったお母様が今年はいない、ということ。その事実が、伐られた桜の樹と重なってとても切ないですね。しかもすみれ公園自体が改修工事に入ってしまって、桜をのんびり眺めるどころではなく、騒々しい現場で、残ったもう一本の桜が静かに咲き誇っている、その何とも言えない悲哀が、桜の花びらみたいにはらはらと散っているような映像を想像しました。5連目の「工事のことは言わないでおこう」という気遣いが、まるで残った桜との約束ででもあるかのような、この桜がこの詩の主人公と同一のような、春独特の胸がしめつけられる感情を抱きました。もしかしたら私だけではないかも知れませんが、寒かった冬からだんだんと暖かくなって、花が芽吹いて春を感じる季節に、私は少し憂鬱になるのです。子どもの頃からそうで、春は苦手な季節とも言えます。最近は花を育てることでその苦手を回避しているような気がしますが、だからこそ、このすみれ公園の桜は心が痛いですね。来年こそ穏やかな心で楽しみたいものですね。佳作といたします。ところでタイトルの件ですが、前回と全く一緒ですが内容は「その後」感がありましたので、「すみれ公園の桜2025」とか「すみれ公園の桜その後」とか、(ちょっとうまいアドバイスがなくてすみません)少し変化があったら良いかなと思いました。宜しかったらご一考くださいね。温泉郷さんは非常に良い感性をお持ちですので、これからも引き続き頑張ってくださいね。
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以上、4作品のご投稿でした。
どうもありがとうございました。
私事で恐縮ですが、今回を持ちまして評者を抜けさせていただくこととなりました。長い間大変お世話になりました。ご投稿くださっていたかた、気の利いた評を書けずでしたのにもかかわらず、どうもありがとうございました。引き続き新作コーナーで宜しくお願いいたします。
水無川渉さま、荻座利守さま、お引き受けくださり誠にありがとうございます。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
花粉や黄砂など、体調を刺激するものが舞っておりますので、皆さまどうぞご自愛ください。
どうもありがとうございました。
井嶋拝