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スレッドNo.5390

感想と評 3/21~3/24 ご投稿分 三浦志郎 3/30

1 こすもすさん 「黒い森」 3/21

前回とは違い、今回は比喩などの修辞は使わず、全くの物語詩。しかも完全な幻想譚、ファンタジーです。3つのパーツを持っています。1連目は深い森のおどろおどろしさと獣がつけ狙っている、その不気味さとスリリングでしょう。暗闇に光る獣たちの目が非常に映像的で印象に残ります。
木に登って危機は去った。2連目は黒い森を俯瞰するシーン。ここも黒と白のコントラストが鮮やかです。「明るくなって」「朝の光」「体が軽く」「空を飛んでいる」など、ストーリーは良い方向に向かい始めました。そして3連目、無事帰還。ストーリー自体はごくシンプルなものですが、詩文が醸す映像感と幻想性はなかなかいいですね。なんだか、僕は読んでいて魅かれるものを感じました。
佳作一歩前で。


2 上田 一眞さん 「桜トンネル」 3/22

サラリと登場人物を整理しておきます。

〇 こうちゃん・近所組(こうちゃん、ゆうちゃん、みきちゃん)
〇 上田・親類組(ぼく・幼い頃の上田さん、妹みいちゃん、従妹のきみちゃん)
昭和25年~昭和30年代をイメージしますね。昔は親戚や近所混じり合って遊んだものでした。
「*」前の「思案顔」はちょっと不思議。なんかあったんですかね?続きがありそう。
メインになるのは「ぼく」と従妹のきみちゃん。そう、子どもの頃って、従妹と遊ぶのは意外とありましたね。「ぼく」よりもきみちゃんのほうが年上なんでしょうね。いろいろ言ってきてます。それにしぶしぶ従う「ぼく」。最後はみんな楽しくて、よかった、よかった。この詩は難しいこと、抜き!これを読んで楽しく昔を懐かしがればOKです。昔はこんな風に遊んでいました。佳作半歩前で。

アフターアワーズ。
染井吉野の実は「苦く酸味があり食用には向かない」とありました。が、まあ、それは文献上のおはなし。そこはそれ、子どもの無邪気さでしょう。


3 津田古星さん 「日本左衛門は若かった」 3/22

僕はこの人物は初めて知りました。いろいろ調べて、大変勉強になりました。事の始まりは自家の先祖調べ。由緒ある家柄なのですね。そこから思わぬ余禄があったという事でしょう。日本左衛門。東海道筋を荒らし回った盗賊団の領袖ですね。各種地域、各種人物が被害に遭いますが、持広村・小右衛門さんだけは押さえておきましょう。話の主役はいつしか日本左衛門へ。その行動(逃亡?)範囲は実に広いですね。遠州掛川付近が中心のようですが、京都所司代、幕府本体も動いている。本人は若くして処刑されましたが、悪党ながらも涼やかな義侠心も持ち合わせていたのでしょう。そうでなければ、歌舞伎や講談など、人々は記憶しないでしょう。最後は先祖・小右衛門さんに思いを馳せ、誇らしげに終わっています。よく調べて書かれた、と思っています。実際の古文書(こもんじょ)にあたったのは、見習いたいところです。甘め佳作を。

アフターアワーズ。
登場する幕府役職人は全て有名のようです。「本田紀伊守」の「本田」は「本多」が正しいでしょう。
この人、徳川家康の謀臣、本多正信の弟・正重の流れなので筋目確かで老中もやってたそうです。
上記は余談。


4 荒木章太郎さん 「象徴を描く」 3/24

「俺は画家の頭だ」―凄いですよね、この言葉。平文では絶対成立しないものです。
この人は画家でしょうか?よくわかりませんが、タイトルと冒頭部分を頼りに書いていきましょう。
ひと昔前だと「コピー体験」、今だと、さしずめ「バーチャル体験」とでも言うのでしょうか。そういった概念も含めて、自己とは?人間とは?を煮詰めてゆく。どんなに巧緻な絵を描いても現実の風景にはならない。愛は実際に体験しないと愛ではない。そのような当然にして絶対的なことを、自らの思考世界に設定し、迷い子のように放浪する、何処かに出口を見出そうとする、そんなさまを想像できます。山火事のくだりは大船渡の火事が脳裏をかすめたのかもしれない。
最後の2行は印象的。差し当たっての、これが回答か?人間の虚と実を橋渡しできるもの。ひとつの生き方の方法、そんな風に思っています。佳作です。


5 月乃にこさん 「手と手は」 3/24 今回、初めてなので感想のみ書きます。

なかなか含蓄に富み、良い詩を書かれています。手という単純な対象をこれだけのボリュームで書けるのも、なかなかの書き手さんと思われます。誰しも思いつくところでしょうが、この「手」は人間に置き換えることができるでしょう。人間個人の内面、人間対人間の関係性、その紐帯、その離合集散まで。その状態に合わせて心情も寄り添うかのようです。とりわけ「手を組む」「手を広げる」に注目したいです。もちろん、これらは単純に動作を考えてもよいのですが、転じて、前者は「志を同じにして共に目標に向かう」さまが思い浮かぶし、後者は「新たな分野を開拓する」が想像されます。終わり2連はフィナーレを飾るにふさわしく総括され、見事な思考で終わっています。ぜひまた書いてみてください。


6 白猫の夜さん 「せめて友のままに」 3/24

冒頭はなかなか印象的な場面です。それ以降は何か恋愛のことかもしれない。どういう種類の恋かというと、「左の薬指の指輪」から、相手は既婚者であることが知れます。ただ「代表スピーチは任せるわね」がヒントのようでもあり、ヒントにしては不充分なようでもあります。想像されるのは以下のようなことです。

「男女グループで、ワイワイ付き合っていたけど、主人公が密かに好いていた男性が(同じグループにいた)別の女性と結婚することになった」

「代表スピーチは任せる“わね”」―は結婚式を想像させるし、「わね」は女性のセリフです。
確かにこうなると、人には言えなくなりますよねえ。別に不倫でも罪でもないですが。主人公だけの心の整理ということになるでしょう。そして、この詩、です。文中「そう あなたは友なのです」はまさに苦渋のひと言でしょう。その人への想いと過去の想い出も「切り刻んで」。そこで登場する笹船の場面です。想いを捨てて、表面上今まで通り「せめて友のままに」。そんなJUST FRIENDS。 語尾の書き方に辛さが滲むかのようです。甘め佳作を。

アフターアワーズ。
最後「ここらで」は、ちょっと。別の言葉を考えましょう。


7 静間安夫さん 「釜山」 3/24

冒頭佳作。
釜山というと、僕の場合、戦争に関わるイメージしかなくて、今回、改めて調べてみると、大都市なので心底驚きました。文体は二つだけ検討リクエストがあります。なに、大したことではありません。
とても雄渾な詩なので、あくまで硬派で行きましょうか。6連目「ごらんなさい」は手ぬるい(笑)。

さあ、旅人
見よ!

―くらいは言っちゃいましょう。 あと最後から1コ前「きみ」も甘い(笑)。「きみの」を削除で「その」で充分通じるでしょう。「釜山」=「おまえ」という強い代名詞があるので、ここは「旅人」=「きみ」という甘さは避けたいです。それだけ!あとは、この詩を読んで、ゆっくり旅情を味わいましょう。
過去に苦難の歴史あり、そして現在の発展あり。日本とも地理・人文共に近い。一般に港湾都市というのは、ホント、ロマンありますよ。そのあたりの事情が充分語られ、叙事、叙景、抒情三拍子揃って正統的な仕上がりです。冒頭と終連の回帰型も僕は好きですね。釜山を調べて、この詩を読んだら、なんだか行きたくなってきましたよ。


8 森山 遼さん 「存在への恨み」 3/24

逆に終わりから行きます。「神、自然、人間」―この3つで、ほぼ全ての「存在」と言えます。
タイトルに近づく事ができます。あとは、その「恨み」の様相を見ましょう。初連、2連が負の何事かを暗示させ、この詩の始まりを伝えます。抽象化された「数千の目とため息」。具象化された「老人、若者、娘たち」つまり殆どの階層が、こわばり、悲しみ、沈黙する。それら深刻な表情を緊張と呼ぶならば、その日は必ずやって来る。これらはすでに抗議を越えてタイトル言葉にまで達しています。
「この瞬間にも/復讐を用意する」は恐ろしいですが、この詩の基調において、選び抜かれた言葉として響いてきます。暗い情念を感じました。 佳作とします。


9 まるまるさん 「息子へ」 3/24

「まだまだ 温まっていないよ」―僕も母からそう言われたことがたびたびありました。

場面、状況は違いますが、親子間で本質は似たようなことがあった。そんな幼女の頃の想い出から始まり、現在を考えています。
やはりこの詩の主軸は交差点での息子さんのエピソードにあるわけです。この息子さんは自分をよく知り、冷静な判断と意志を持っていました。母は自分の不明を恥じながらも、息子さんの考えと行動に満足し、さらに激励します。すなわち「これからのキミは」以降、充分、結論的な結びをしています。実にこの詩はこの部分であります。
いっぽう、僕はこの詩に、もうひとつ別の事項も感じていて―言葉では上手く言えないんですが―こんな感じ。母親の側です。

〇 自分が子どもだった頃の親
〇 今度は自分が親になった時の子ども

このふたつの思いが、この詩の情緒の中に少なからず入っている気がします。受け継ぎのようなものでしょうか。 佳作半歩前で。



評のおわりに。

いよいよ4月。良い季節になって来ました。近所の家の桜も咲きました。
明日は知人の絵画展に行ってきます。 そのタイトルが「交わる軌道のむこう」。
どこか、詩的でいですね。帰りは何処かで美味いもんでも食べて。 では、また。

編集・削除(編集済: 2025年03月30日 13:46)

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