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スレッドNo.54

感想と評 6/3~6/6 ご投稿分  三浦志郎  6/10

新掲示板、僭越ですが、お先に失礼致します。


1 galapa(滝本政博)さん 「祝祭」  6/3

僕の好きな詩人の、作風という意味において、最も抒情的で、最も“タイプ”な作品のひとつでしょう。何の無理もなく、諸手を挙げての佳作です。「ふたり」であることの祝祭。その中で、いろいろな事を思い、いろいろな事を行動し、周囲の様子もふたりを寿ぐように豊かです。それらを綴る詩文は豊穣と美に溢れ、適度な幻想性も纏っています。よくないところがひとつもない。例として、単語だけ並べますが、それを含む行全体と思ってください。「くちなし、ナイフ、饒舌、庭園、噴水、引き潮、憧れ」―これらは全てが“galapa印”。印象的なのは終わり近い炎の部分でしょう。祝祭の火。ここでふたりは一夜を分け合うのでしょう。バーを上げるというよりも次の段階が来ているのではないでしょうか。
祝祭のような―。


2 雨宮800さん 「ジオラマ」  6/3

まず詩の構想、発生要因は薄っすらわかる気がします。比較的高層のマンションの窓から見える景色、それがタイトル。初連最後にも顔を出します。なるほど、そのように見えることもあるでしょう。
「ジオラマ」の持つ語感がマニアックかつユニークかもしれない。そこから詩は心の在り処をイマジネーティブに探検していくかのようです。「罪」意識が主要部分になりますが、これは具体的な犯罪を指すものではなく、生きる、ということを「罪」の側面から模索した、そこから立ち上がってくるような世界観のようなものを感得しました。綴られる単語は、どちらかと言うと、やや危険で背徳的なイメージで彩られるかのようです。その結果、この詩はひとつのトーンを獲得していると言えます。
なかなか奥深げな抽象性があります。そんな中にあって、一点言うと「愛をくれよ、愛を」は、ちょっとベタというか、陳腐な気はするのですよ。ここだけ、今一歩推敲したいです。セリフが思いつかない場合は、怪しげな仕草描写でもいいと思います。
こういう詩って評価が難しいんですよね(笑)。うーん、とりあえず、一歩前で。 いつかミメ手が来るでしょう。

“評的、私的”アフターアワーズ。
読み手は自己の自由のもとに読むものですが、そういった感覚で私事から―。
最近、黒人スローブルースに“ド”ハマリしているのですが、書いてる今もそういったものが鳴っているのですが、この詩、そんなブルースフィーリングにとても合ってる気がするんですよね。前作とは違う。とても黒っぽい感覚がある。これでブルースソングができるかもしれない。それには、も少しセンテンス短めのほうがいいのかも……。そういう場合は「ボク」でなく「オレ」でしょうね。そんな勝手な想像です。
ともかくヨタ話です。聞き流してください。


3 西条紗夜さん 「嘗ての英雄たち」  6/3

前回のコメントで、たしか、父上のことに触れられていたことを、この詩を読んで思い出していました。そんなわけで、主に「お父さん」について触れたいと思います。2連目に注目です。
デキる男は、“あっち方面”(女関係)もしたたかでしょう。「みんなを苦しめ」たことは事実でしょうが、「やっぱりすごかったよ」と思わせてしまう。それも父という嘗ての英雄の、他愛ない偉大さだったかもしれません。時代もよかった。「男の甲斐性」などと半ばうそぶいた時代です。
この詩を読む限り、父上は仕事も遊びも達人だった、そんな気がするわけです。そこが修辞上「英雄」と言われる由縁でしょう。そういう部分がひとつと、この詩の肝は、もうひとつあって、すなわち「僕ら(英雄の子供たち)」の―父たちと比べての―不甲斐なさのような事です。このことは評者も実感を以って賛同できます(アフターアワーズで後述)。この詩を読むと、ちょっと大げさですが、巷間、たまに言われる“二代目の悲哀”のようなものも感じることができるのです。まあ、お互い嘆いても仕方がない。僕らの子供世代が(親父はすごかった)と思う時もあるかもしれない。世代とは、一面、そういったものでしょう。素朴ですが共感度高く、甘め佳作を。

アフターアワーズ。
おそらく、父上は「何でもできた」のでしょう。ウチの父もそんなところがあって、家の一軒でも建てかねない勢いでした。おそらく戦争に行った世代とは、多かれ少なかれ、そんなだった気がします。
これは推測ですが、戦争とは物理的に、あらゆる処理能力を総動員する環境であり、それによって鍛えられたことがあると思います。次に心理的に(あの戦争に比べれば、平和な世間のことはたいていはしのげるさ)―そんな自負・気概があったように思えるのです。やはり、人間、時代によって造られるようです。


4 cofumiさん 「消えた街/消えた足」  6/3

この詩は日常という衣に下に隠された凄み、でしょう。あるいは悲しみ、と言ってもいい。
2連から、そういったものが見え隠れするように設定されています。流れ星が見えるのは、普段の窓辺などではなく、例えば、天井が破壊されて見えているような―、しかもそこにあるのは爆音と(おそらく破壊的な)光だったでしょう。そして猫のペペロンチーノ「名前を呼んでも」はおそらく死んじゃったのでしょう。続く粗末な寝場所。大穴から見える「燃えている夜」。あるいは消えた教会。
何処にも書かれていないが、これは、ズバリ、ウクライナの街の惨状、文字通り「消えた街」、と見ます。終連が極みです。これは幻想などでも何でもなく悲しいリアルでしょう。地雷でしょうか。
この詩の真価と僕の評価は総て、冒頭にあります。「何気なく、淡々と書かれていますが、実は・・・・・・」。そういった筆致力にあると思っています。佳作です。


5 荻座利守さん 「朝の通勤電車」  6/5

初連~3連まで、柔らかく順当な書きぶりが麗しいですね。もう通勤電車に乗らなくなった僕には、なぜかとても懐かしい。実景叙述といったところでしょう。「ひとりひとり」「ひとつひとつ」を継承し考えを深めていく、その広がり方、深め方はいつもの荻座さんですね。すなわち6、7連です。ここが肝。ひとりひとりがそうであり、自分も又、そのような境遇にあるといった実感が滲み出ております。
「義務・責任→願い→未来」―この言葉の連鎖が上手く代表されました。今までの作風からすると、
少しライト感覚に振られています。モチーフのせいもあるでしょう。それもアリでしょうね。ただ、も少しテンションがあってもいい気はしました。例えば、ピンポイントの個別のようなもの―ふと眼がいったある人物でもいいし、個別には荻座さん自身も入ることでしょう。 
佳作一歩前で。


6 南 ほたるさん 「いつかのきらり」 6//5 初めてのかたなので、今回は感想を書かせて頂きます。

よろしくお願い致します。
まず、タイトルが粋ですねー。予感のようなものも感じさせるし。3連の直喩群がいいですね。とりわけ「貝殻の裏側~夕焼け色」のくだりです。「外にいこうよ」の連がひとつの転換点。「カメラ」という小道具も利いてます。

パーセンテージで測れない あなたの貝殻の裏側で
水滴が一粒 きらりとするかもしれないから

ここが3連を受けてフィナーレにするにふさわしい名フレーズでしょう。「貝殻」の件は作者さんも気に入って再度出したと思われます。そう、パーセンテージで測れないものに「心」があるでしょう。
詩はそのことを充分に感じさせるし、偶然をも呼び込んで、祈りが叶うことを希求する、そんな詩です。文体は会話的なものを感じさせるほど、柔らかくリラックスしてやさしさがあるようです。前作にもそんな感覚を得ました。個性でしょう。ささやかではありますが、なかなかいいですね。また書いてみてください。


7 紫陽花さん 「人魚姫」 6/5 初めてのかたなので、今回は感想を書かせて頂きます。

よろしくお願い致します。
最初から申し訳ないのですが、初句、「大きな山の~」と全体との繋がりがよくわかりませんでした。
端的に言えば「何故、山なんだろう・」といった疑問です。あと、擬音の「ぼとぼと」は、少し柔らかいものに替えておきたいです。奇妙に思ったのは、その2点です。推敲を重視すると良いでしょう。
この詩のモチーフへのアプローチとして、3つほど考えられそうです。

① 一般的イメージとしての人魚
② アンデルセン童話に出て来るキャラとしての人魚(つまり物語に沿ったような)
③ デンマークはコペンハーゲン港にある人魚像

僕としては①だろうと推測できますが確信はありません。「岩に座った」で③もチラつくのですが。人魚自体が想像の存在なので、①で、ファンタジー的な出会いと会話、と捉えるのが最も順当なようです。様子を見ましょう。また書いてみてください。

アフターアワーズ。
コペンハーゲンの人魚像はちょっと可哀そうです。有名ですが、小さ過ぎて見物人ががっかりするそうです。あと、岸辺近くにあるせいか、汚されたり傷つけられるので有名なようです。


8 朝霧綾めさん 「湖」  6/5 初めてのかたなので、今回は感想を書かせて頂きます。

よろしくお願い致します。
「美しいものに傷つく」を、軽い驚きで読みました。詩的にもけっこう刺激される言葉で、深いところへ誘ってくれるものがあります。そしてこの考え方が、ある意味、この詩のメインの思考になっているのを感じてしまいます。ここには「湖・あの子・水」と3つの存在が認められますが、「あの子」も冒頭書いた心境の対象になるでしょう。幼女がイメージできます。推測される意識の流れとしては、
「傷つく→心に刻まれる、留められる→うれしい」。真ん中にある気持ちが「映している」に繋がる可能性は考えられるでしょう。僕にとっては、その両端、および冒頭の言葉が、当面、美しい課題として残りそうです。過去作も軽くレビューしましたが、比較的短めが多いようです。いろいろと、また書いてみてください。


9 緋夢灯さん 「返礼」 6/6

ありがとうございます。この作品はイコールご挨拶と理解して、評価は外し、寛いで書きたいと思います。緋夢灯さんが(旧)掲示板に初めて来られた日のことを想い出しています。
たまたま、僕が当番でした。確か漢字ばかりの意志表明のような作品でした。資料はとってあります。探せば必ず出てきます。今だから言えること、当時の気持ちを正直に書くと、その異様な詩、異様なペンネームと相まって「ちょっとヘン、ちょっとコワイ」と思ったことでした(ごめんなさい!)。今は昔。今となっては微笑ましいエピソードであります。互いにとって“慣れる”ということは、とても魅力的なことです。
コメントにある通り、旧掲示板の末期に立ち会い、新掲示板にも最初の一歩を印した。その橋渡しを僕は大変嬉しく思っております。
緋夢灯さんは思考あり、抒情あり、礼儀あり、ユーモアあり、の人材です。作品は旧掲示板、感想は新掲示板という変則ではありますが、これからもよろしくお願い致します。


10 もりた りのさん 「もう死ぬというのなら」  6/6 初めてのかたなので、今回は感想を書かせて頂きます。

よろしくお願い致します。
すでに5~6作書かれているかたですね。過去作も軽く当たらせて頂きました。なかなか多くの“引き出し”をお持ちのようで、多彩なモチーフ、多彩なスタイルに対応可能な属性を感じています。
サイズでも言えそうです。長めあり、の中の、今回の連なし短めです。比較的”強い“書き方をしているので、おのずと伝わるものは大きいです。そして考えさせるに深いものがあります。
ところで人間は―身も蓋もない言い方をしてしまうと―死に向かって生きている。同時に、詩を含む文学の重要な課題のひとつです。どうせ一度は死なねばならないなら、この詩から感知されるのは「だったら、その時が来たら積極的に死んでやる」―そういう感覚が「最後の力を振り絞って」「内側から閉める」「飛んで行く」「生まれない」等に窺われるのです。結果、僕の感想としては上記“強い”に至るわけです。意志力としての発想が面白い=興味深いわけです。
バリエーションを伴って、書き慣れた人でしょう。また書いてみてください。


11 ピロットさん 「古地図は語る」  6/6

東北学問の雄、東北大学の「東北大学総合学術博物館」が、この詩の大きな容器としてあると思います。調べると「企画展・ヨーロッパ古地図にみる世界と日本」というのがヒットしました(現在は終了)。それの見聞詩、印象詩ではないかと思われます。
この詩で主に描かれているのはクローバー図とテイシュイラ日本図でしょう。前者では中心にエルサレムが描かれ、科学というより宗教思想が支配していたことが窺えます。そのことを自己の言葉で詩化した5連が注目されます。やはり最も興味深いのは後者を描いた第二単元でしょう。時代で言うと織田後期~豊臣末期。宣教師という知的外国人が数多く入って来たとはいえ、僕はよく日本の原形を捉えていると感じました(北海道は無いにしても)。布教(その先にある征服?)目的があったにせよ、彼らの知的探求とそのレベルの高さには驚かされます。
第二単元終わり3連にも自己の考え方が述べられ、オリジナリティを感じました。そうですね。彼らの都合、傾向、野心も仄見えるかのようです。第三単元「東北大学博物館」。これがないと、この詩は意味を成しません。いいと思います。最後に持って来たのがおもしろい。フィナーレは他の展示物にも触れ、幻視、幻聴を交えながらトータルに終わっています。単に解説ではなく、詩になっている由縁でしょう。今までより少しモチーフを微調整したのも効果的にして魅力。佳作です。

アフターアワーズ。
今回、登場した二図の他に、オルテリウス「世界の舞台」1570年には驚かされました。
殆ど合っているではありませんか。現代地図の原形と言ってももいい。今回の詩に触発されて
調べた結果、久しぶりに詩的に、知的に興奮を覚えました。ありがとうございました。



評のおわりに。

やってまいりました。詩的引っ越しを終え、新しい掲示板であります。大変喜ばしいことです。
―ですが、古い方の掲示板の話をします。僕が「MY DEAR」掲示板を初めて訪れたのは、2001年6月。どの作品を出したかは忘れました。以来棲み続け、「生国は何処?」と問われれば―、「MY DEAR国は、掲示板の住人!」と名乗ることでしょう。
初期・中期は「新作紹介」にも投稿していましたが、何故か僕は掲示板にばかり出すようになりました。ひとつには、自分が寡作になったからです。積極的理由としては、ここのデイリー感、ライブ感、ワークショップ感が好きなのでしょう。あるいは「実作⇔評担当」を、ワンセットで把握しているのかもしれません。
さて、新しい掲示板です。そして初めての評であります。皆さんと共に、ここで新たな歴史を切り拓いてゆくことになるでありましょう。そして、皆さんの作品も常に輝き新しくありますように―。今後ともよろしくお願い申し上げます。 では、また。

編集・削除(編集済: 2022年06月10日 12:01)

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