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スレッドNo.5486

善悪スノーノイズ  松本福広

「砂嵐」とか「スノーノイズ」といっても
今の子たちに伝わるのだろうか。
テレビがアナログ放送だった時代の話だから
小、中学生には伝わらないかもしれない。
受信環境や機器の不具合、当日分の放送の終了すると
画面いっぱいに雪が降ったように細かく白い点やザラザラした模様が現れるともに
ザーッとノイズが流れる現象のことである。

そのスノーノイズが私の脳裏に流れている。
「あなたがたのうちで罪のない者が、最初に彼女に石を投げなさい。」新約聖書の一節。
スノーノイズでたちまち文字は砂嵐に塗りつぶされ
声はノイズでかき消える。
罪なんてものは私にはないのだから。
後ろ指を差されることは何ひとつしていないのだから。

「今時の若い子は」自然と出た言葉。
挨拶をしないで素通りした新卒の社員。
挨拶は人としての基本だ。
私はおかしなことを言っているだろうか?
思い返すだけでイライラが募る。
「おはようございます」誰かの声。
その声に返事をしなかった私。
少し前の自分の言葉にすらスノーノイズがかかる。

日常の小さなこと。すぐに忘れてしまうこと。
それはスノーノイズの中に紛れて分からなくなる。
生きていくためには忘れることも必要なのかもしれない。
十年以上前に買ったテレビにはリモコンにアナログ放送のボタンがある。
押すことはまずない。スノーノイズが流れるだけだから。

ザーッ(あの時の嘘)
ザーッ(あの時の意地悪)
ザーッ(あの時の無視)
ザーッ(あの時の態度)
ザーッ(あなたへの、ありがとう)
ザーーーーーッ

一瞬だけ写った画像。
私が、縛られていた女の人に石を投げていた。
知らない女の人だった。
「許せない。お前は悪だ」
そうつぶやき、力いっぱい腕を振り上げて石をぶつけていた。

編集・削除(編集済: 2025年04月09日 06:42)

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