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スレッドNo.5498

絶望の夜に……  相野零次

何もできない夜があった
孤独で無力感に苛まれ
一遍の詩すら書けない夜

ただ茫然とするしかなかった
自分の人生を振り返り
何も残せていないことに心から涙する夜

こんな夜でも時間の持つ重みは変わらない
背中にずっしりと感じる黒い翼は決して開かない
髪は伸びていき
爪は生えかわり
年をとっていくことを
実感する夜

眠りに身を委ねてしまえば
緩慢に朝は訪れる
何も得ることのなかった一日が過ぎていく

年をとることは
確実に死へ向かっていること
線香の煙がほのかに漂い
匂わない鼻に香り
見えない眼に染み入る

先祖の霊が嘆いている
お前は今に何か残せないのか
私たちが受けついできたものを
感じ取れないのか
受け取れないのか
今の私にまだ受け継げないのだろうか
背中の翼は黒いばかりで
両手はからっぽなのだ

闇は私を蝕むばかりで
光が私を癒すことはない
絶望が支配する夜
希望はどこへ置き忘れてしまったのか
今夜のうちに少しでも見つけたい
一片のかすかな光を

年経ることを私は恨む
どうして若返ることができようか
鏡を見れば
瞼はたるみ
深くなったほうれい線が
増えてきた白髪が
無常な現実を映している

明日への光はどこにある?
この一遍の詩のなかから
それを見出すのだ
それが今の私にできようか?

スマートフォンから曲を流して
胸の内で口ずさむことで
私は元気づけられる
私は無感情ではない
私にはちゃんと喜怒哀楽がある
心が揺れ動くのを感じ取ることができる
胸の奥からかすかな光が生まれる

私は歌を習っている
先生のライブを先日
聴きにいった
素晴らしいライブだった
今思いだしても心が揺り動かされる
演奏も素晴らしかったが
ユニークなMCもよかった
拍手と笑顔の二対の感動があった

私は歌が好きだ
それは確実なことだ
ちゃんと言葉にして形にできる
背中の羽根がほのかに白く光るのを感じる
私は天使でもあり
  悪魔でもある
日々その合間を彷徨っている
いずれどちらかの魂となって選ばれ
天へ昇っていくのだと思う
人間でいるあいだにその準備をしているのだ

こんな絶望の夜は悪魔に近づく
でも私は恐れない
今 私はちゃんと好きなものがあるから
歌自体が好きなのはもちろん
歌をうたう人たちも
歌をうたう自分も好きだ

そこには確かに愛がある
先日のライブでは
LOVEが歌詞となって
みんなで合唱することができた
一人一人はささやかな光でも
多くの人が集まれば大きな光となる

今 私の心を楽しい思い出が包んだ
それは絶望の奥底から
確かに希望という喜びを生み出した
それはまだ小さな蛹で
蝶となって羽搏くにはまだ何年もかかるだろう
途中で息絶えるかもしれない
そして
不安もある
心も身体も確実に衰えていくからだ
果たしてそうだろうか
私よりずっと年上の方の
素晴らしいコーラスが私を励ます
同世代の人たちの素晴らしい演奏が私を潤す
私は衰えるだけじゃない
努力を続けることで
成長して若返る一面も見えてくるはずだ
それは大きな希望へと育つかもしれない

絶望の夜は哀しみに包まれている
私は胸の内でくちずさんだ
数か月後に発表会がある
その為に練習している歌を
するとどうだろう
また私の胸の内から小さな希望という
命が生まれたのだ

神よ
私は無力な人間の一人です
でも仲間がいるから力を借りることができるのです
共に歌を愛し
共に歌を唄う仲間がいるのです
だから一人 絶望の夜も
乗り越えることができるのです
ありがとう神様
ありがとう仲間たち

絶望の夜は
もう少しで終わりそうです
もうすぐ12時をすぎるのです
そして私は蛹となって眠りにつくのです
明日は希望が見いだせる日となるでしょう
これが歌の 人の力であり
神が私に与えた詩を書くという
ささやかな才能なのです

アンコール
もう一度 感謝の言葉を
ありがとう神様
ありがとう仲間たち
ありがとう私の心

そして
おやすみ絶望の夜
おはよう希望の朝

編集・削除(編集済: 2025年04月10日 22:07)

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