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スレッドNo.5517

聞き役 津田古星

わたしは話を聞くばかりだった
だから あなたは自分のことを話し続けた
わたしのことは何も聞かないで
わたしが無口な女の子だと思っていた

36年が経って わたしが電話したら
やっぱりあなたは自分だけ話して
わたしに話をさせてくれなかった
「昔とちっとも変わらない 
わたしのことは何も聞きませんね」と言って
それでも 相槌を打ち
時々 質問をはさんで
話しやすいようにしてあげたら
後で言ったものだ
「あなたは明るくなった」と

わたしは暗い人間じゃありませんでしたよ
ただ わたしの聞きたい言葉が
あなたの口から出ないことを
いつも淋しく思っていただけ
あなたは無邪気に
明るい人 何でも気軽に話す人が
好きだと言って私を悲しませた
わたしを暗くしたのはあなただったことを
あなたは気づかなかった
何にも分かっていない人だったんだ

わたしはあなたが会ってくれること
わたしに話してくれることだけで
笑っていなければならなかったのかしら

言いたいことも聞きたいことも飲み込んで
ため息と共に帰るわたしは
一度も振り返らなかった
振り返ったとき
あなたが背を向けていたら辛いから

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