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スレッドNo.5532

貨物列車  こすもす

ある日の夕暮れ
仕事帰りの乗り換え駅
電車は少し遅れていた
風が頬をなでる
ホームで電車を待っていると
反対側のホームに貨物列車が入って来た

列車は駅に止まらなかった
機関車が轟音をたてて走る
機関車の後ろには車両が長く連なっていた
古い車両はみなどこか錆びている
連結器の軋む音が響く
ゆっくりと目の前を通り過ぎてゆく
最後の車両がはるか向こうに見えた

通り過ぎる列車を見ていて気づく
積まれているコンテナが数えるほどしかないことに
線路と並行する道路がある
大きなトラックが列車を追い越してゆく
トラックは視界から消えた
「時代の流れなのか」
最後の車両が通り過ぎる
機関車が警笛を鳴らす
「叫んでいるのか」
時代に抗うように列車は走る

列車は次第に小さくなってゆく
駅に静けさが戻る
西の空が赤く染まっていた
夕日が沈みかけている
風がやけに冷たい
辺りには寂寥感が漂う
待っていた電車がホームに入って来た

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