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スレッドNo.5562

☆4月15日(火)~ 4月17日(木) ご投稿分、評と感想です。  (青島江里)

4月15日(火)~ 4月17日(木) ご投稿分、評と感想です。


☆聞き役 津田古星さん

行や言葉の裏側に、細かい心の動きが感じられる作品だと感じました。「聞き役」というタイトル通り、一人の人の話を聞き続けてきた「わたし」という個人。拝見して、かなり聞き役として耐えてきたのだなという風にも感じました。

作中の「36年」というワードを用いられている点については「わたし」の「あなた」に対する期待の気持ちが込められているとも感じました。長い年月が経ったから「あなた」の一方的な会話ではなく、お互いが、ふりこのように会話できるというような期待です。ですが、その期待はものの見事にはずれてしまうという淋しさ。「あなたは明るくなった」という会話の一言をピックアップして表現されたところは、ずっしりと迫ってくるものがありました。

対等ではなかったのだというやりきれなさ。「あなた」は明るくて何でも気軽に話す人で「わたし」は無口で暗い人。一方的とも感じられるその決めつけ。常に「あなた」という人は、「わたし」という人の上でなければならない。「聞き役」どころか、さもすれば、はけ口や、承認欲求を満たすための定位置に座らされているような痛みまでも伝わってきました。

作中の中盤までは、特別に用意されたかのようなレトリックも目立った表現もありません。しかし、ここまで心中を感じさせてくれるのは、なぜだろうと考えると、個人的に感じたのは、会話の選出の方法がよかったということでしょうか。ある意味、会話でも読ませてくれる作品でもあると思いました。で、す、が、この作品は、このままで終わりませんでした。そこが一番よかったです。

一度も振り返らなかった
振り返ったとき
あなたが背を向けていたら辛いから

この表現は、とてもとても詩的な表現だなと感じました。

ずっとずっと耐えてきた「わたし」が36年ぶりに「あなた」とあった日の出来事。対等に楽しく会話をできるかもと淡い期待までも、一撃のような言葉で破られ、嫌われるかもという不安を押し切り、わたしのことは何も聞かないといった「わたし」・・・・・・そのような背景がみえてくると「わたし」のラストの気持ちや様子が、一日の終わりの夕暮れの細々と伸びた影のように思えてきて、なんだか泣きそうになっちゃいました。作中に「あなた」から「聞き上手」という言葉がひとつもでないことからもわかりました。「聞き役」なんですよね。できることなら画面に潜り込み、作品の中に入っていって「わたし」に、もう我慢しなくてもいいよって、背中をさすってあげたくなりました。佳作を。



☆Tasting Note : 『直喩的回想の風味』 佐々木 礫さん

初めてのお方ですね。今回は感想を書かせていただきますね。

ほぼ比喩。しかもタイトルで「直喩的回想」と言い切ってしまっているところ。思い切りの良さを感じました。何て言っていいのか、小川に流した葉っぱの舟のように流れていくような詩のリズム。とまることなく、ぶつかることなく、さらさらと流れていくリズムにのせられた、架空のメニューたち。現実にはないのだけれど、どこか本当にありそうな気持ちにさせてくれるような言葉のチョイス。

こじゃれた雰囲気の音感の中に突然出てくる「母の平手打ち」などという言葉に驚かされたり。美味しそうな言葉の中に、または、美しくてまぶしい世界を掲げる言葉の前後、中にも、見え隠れしてくる闇のような数々。なかなか手が込んでいる作品だと感じました。作者さんの独特な世界観を、たっぷりと魅せていただきました。



☆4コマ漫画  喜太郎さん

発想がユニークですね。喜太郎さんは、これまで、恋愛詩を多く書かれてきましたが、 今回の作品のテイストは、今までとは少し異色の作品だと感じました。作者さんのアレンジがいい味を出しているように感じました。恋愛の流れを起承転結の4つにわけて、4コマ漫画のようだする感覚がとてもユニークでした。出会いから別れまでの回想シーンの描き方は、いつもどおり丁寧で、ゆっくりとした風が流れていくような雰囲気に仕上がっていると思いました。

細かいことをいうとしたならば、上から七行目の【『寒いね』って言えた暖かさ】の【暖かさ】ですね。【暖かさ】とすると、肌で感じるもののみになってしまいます。【温かさ】とすると、心で感じるものも含まれることになります。彼女の手の温もりから生まれてくる自身の心で感じられるあたたかさも表現したいのなら【温かさ】と表現されるのもよいと思いました。別の方法として、ひらがなという字体からくるやわらかさで表現する【あたたかさ】を用いる表現方法もあります。こういうことを考えながら詩を書くのも楽しいですヨ。

恋愛を四コマ漫画のようだと感じて終わるだけなら、ただの面白い発想を用いた作品で終わってしまうのですが、今回の作品の醍醐味はラストの部分です。

思い出は曖昧になって薄れてくの?
やがては4コマ漫画になってしまうの?
悲しい漫画は笑えないままなのかな

一般に四コマ漫画と言えば、冗談や皮肉をもって、笑い導く作品が多いのですが、このことを頭に置いてこの作品のラストを拝見すると、何とも言い難い切なさが波及してくるのです。大切な思い出が薄れていってしまう切なさ。「冗談」「笑い事」と言うワードが、頭の中にクローズアップされていきました。「冗談じゃないよ。笑い事じゃないよ。そんなこともあったねと、自然に笑いたいけど」そんな切なさが、作中の「めぐる季節」という言葉も手伝って、走馬灯のように巡り出しました。その四コマ漫画という落とし込み方が、とてもよかったと思いました。佳作を。



☆ずっとずっと  じじいじじいさん

春って、あんなに長く感じる冬の間に待ち続けているのに、あっという間に終わってしまうのはなぜなのでしょうね。

この作品から、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうのだなと感じてしまうのは、みんな同じなのだなと、改めて思えました。また、春のお楽しみの一つの「さくら」の美しさ。さくらを慕う気持ちも、もちろん、みんな同じだと感じると同時に、ずっと咲いてくれればいいのにという気持ちの中に、止まらない、止めることのできない季節の流れを感じることができました。

気になったのは、同じ連に同じような意味合いのことが重なっているところが、作中のところどころあるように思えたので、その部分を整理していけば、もう少しまとめることができることかなと思いました。一例をおいておきますね

はるになると たいようがはるがきたおしらせで
「はるがきたよ あったかくなったよ」って
さくらのはなをさかせておしえてくれる
         ↓
はるになると たいようがおしらせしてくれる
「はるがきたよ あったかくなったよ」って
さくらのはなをさかせてくれる

作中で一番心に残ったのは、下記でした。

せっかくがんばってふゆをのりこえて
せっかくキレイにさいたのに
ちょっとだけさいておわりなんだ

この中の「ちょっとだけさいて」という言葉、子供が言ったのだと思うだけで、なんともいえないかわいらしさを感じてしまいます。なぜちょっとだけなの??みたいな、ちょっとすねたような、ちょっと困り顔のような、どこか頼りなげな子供の顔が浮かんできてとまりませんでした。

ずっとずっとさいてほしい・・・・・・ ほんとそうですね。
大人も子供もみんな大好きな桜の春を描いてくれた作品、今回は佳作二歩手前で。



☆gold moon/とある青年の独白 松本福広さん

※詩の訂正の件のメールをありがとうございました。受け取っております。ご安心くださいね。

月。地球から見て太陽と同じくらい身近に感じる存在ですね。メールで海のことをお知らせいただきましたが、それで思い出した余談ですが、月って地図があって、地名なんかもあって楽しいですよね。

外国(日本から見て)に住む裕福とは言えない青年が、月には金があると思い、あの手この手を尽くして、本が読めるようになるまで勉強するが、金のない星だと知る。その途中で日本という国を知り、自ら命を絶つ人が多いことも知るという感じで、作品の大筋を捉えました。

個人的には物語詩のような感じで拝読させてもらいました。格差社会、治安の悪さ、一攫千金に望みをかけるしかないと思いたくなる環境だとか、青年の暮らす国の様子の書き込みは、詳しく書けていると思いました。月に執着してしまう動機の理解にも繋ぐことができていると思いました。(中略)から出現してくる日本という国の様子は、この青年の国の様子と対峙させるために一役かっているようにも思えました。二つの国の様子を照らし合わせてみることで生まれてくること、何が人間の幸福なのかと言う思いを読み手に投げかけてくれているようにも思えました。

最終的には日本人は希望が多すぎるということや自ら命を絶った人に対しての問いかけのような形で終わっています。個人的には、最後の着地点が日本人のことになっていることに関しては、最初に月に視点をあてて書き続けていたということを思うと、着地点が少しずれてしまっているように思えてしまいました。日本の社会のことを一番のテーマにしたいのか、それとも、月をメインとして理不尽な世界全体の様子について書きたいのか、その点が私の中では、ぼやけてしまいました。う~ん、どうかな。今回はテーマが大きすぎてしまったようにも思えます。世界全体の様子も不安定だし、最近のこの国の社会の様子にしても疑問に思うことも多いし。ラストに投げかけている、自ら命を絶つ人のことについてなんて、かなり深い問題だし。全部でなくてどこか一つに絞る方がよいのかなと感じました。青年の国のことにしても、日本のことにしても、それぞれを分けて拝読すると、それぞれよく書き込めていたので、なんだか、せっかくの筆力がもったいないなぁと感じてしまうのです。それにしても、月の本をひらいて知った青年の言葉は、著名人が残すような言葉で名言だなぁと・・・・・・「月には黄金なんてなかった」

現実を知る厳しさについても考えさせてくれる作品でした。今回は佳作一歩手前を。



☆許しの傷  温泉郷さん

子供が他人の物を壊してしまうシーンは、誰もが一度は見たことがあるのではないかと思います。そして、見ている本人や子供も小さい頃、同じようなことがあったなということを感じていたりするのではと思ったりします。

イケないことをしてしまったなという申し訳なさは、大人は思いっきり頭を下げたり、弁償という形で表したりすることができますが、子供はというと、大人が一緒に謝ろうと言ってあげずにいると、そのまま何も言えずに終わってしまいそうです。言わせてもらえなかったことは傷になって残る。言わせてもらえなかったことを許すけれど、それは傷になって残り、大人になって循環し、いつかその古傷が痛むこともある。

読み手の私は、作品からこのようなニュアンスを受け取りました。これが仮にそのまま作品の趣旨やテーマとして用いられているのだとしたら、表現するのはかなり難しいことなのに、このようなわかりやすい状況や、言葉をもって表現し、伝えることができるということについては、私の中では、ことごとく印象に残る表現となりました。壮絶な体験から表現するということでも難しいことだと思いますが、皿を割ってしまった子供という、誰もが見たことのあるシーンを起点として、このように読み手に表現できるのは、日頃から、生活の中にある出来事をまっすぐに見つめ、深く掘り下げ、感じようとする気持ちがあるからなのだと思いました。佳作を。



☆芸術  相野零次さん

拝見していると、パステルのような淡い美しい色を感じました。とってもいい匂いを感じることもできました。ここちよい音を感じることもできました。

切っても切ることができない芸術と自然。その自然の描写が、誰もが目に浮かべられるように描かれていると思いました。映像が浮かんでくる文字のマーチです。

作者さんの芸術論。芸術論といえば、ものすごく堅苦しいもののように思えてしまうのですが、こちらの作品の芸術論は誰でも気軽に読めてしまうという、いい意味で、カジュアルな芸術論。人生についても絡められていますが、すいすい読めて、その上にどこか気持ちを楽しくさせてくれます。そして、作品の初めから終わりまで、作者さんの芸術に対するまっすぐな熱を感じさせてもらえました。

作品の中で一番印象に残った一行は「挨拶も僕は芸術だと思う」でした。その理由としての「生きることは芸術との出会いと別れの繰り返しだ さまざまな人との出会いと別れの繰り返しだ」という表現。説得力を感じました。そしてとても素敵な考え方だなとも思いました。終盤の言葉も印象的でした。

さようなら今日の僕 さようなら今日のみんな
さようなら今日の僕と過ごした芸術たち

このような言葉に触れると、暮らすということは、生きるということは、みんな芸術の仲間なのだよと伝えてもらっているような、そんな風にも思えてきました。佳作を。


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つばめをみることができました。昨年は、ほとんどみることができなかったのですが、今年は、昨年よりも多くの数のつばめをみることができて嬉しかったです。あと少しで5月。はやいなぁ。桜の青葉がきれいなこの頃です。

みなさま、今日も一日、おつかれさまでした。

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