花筏の恋 白猫の夜
あなたのせいよ
あなたがそんな目で見つめるのだから
わたし 恋をしたのだわ
あつくて あつくて
触れたら火傷しちゃいそう
あなたはひどいおひとなの
だってね
向日葵のような眩い笑顔で
獅子のような凛々しい顔で
春の陽気のような柔らかな空気で
わたしをその気にさせておいて……
ほんとにずるいおひとなのよ
根暗に生きるあたしが
眩しいあなたに焦がれてしまうことなんて
わかりきったことでしょうに
ふわりふわりと花筏
湖面に浮かんで
いずれ沈んでいくひとひらの恋
咲き乱れた先の行く末は
なんとも呆気のないことで
後先考えず突っ走ったゆえの
つけがまわってきたのでしょうね
でも
このままじゃあまりにも
癪に触って仕方がないから
春を
この暖かな春を
春を
あなたに渡してあげる
春はね 夏に持っていけないの
だからきっと今のあなたじゃ手に余るわ
ねぇ その手のひらの春をおもって
いつかこの春に帰ってきてね