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スレッドNo.5584

隣で眠る君に  荒木章太郎

朝目を覚ませば
言葉を失っていた
意味がなくなっていた
全てが鳴き声となり
となりで君も音になった

君の鼾に伴走していた
もうそこは海辺ではない
息の根が止まりそうな
無重力地点で
理解しがたい海から
息継ぎをしに上がってくる
君を待つ
お互いが月のように
裏側を見せないものだから
でこぼことした海の底を
垣間見ることは孤独でしかない
潮の満ち引きに合わせ
君は目覚めることのない夜に
向かっていた

僕は横隔膜を震わせてみる
カエルとなり
コオロギとなり
全身を震わせてみる
鳴き音が出た
感情を振動に乗せて
音が波であることを感じて
光も波であることを識る
波だ、涙あふれて
光となるように鳴る

眠る君に触れず
それでも届く波を信じて

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