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スレッドNo.5601

undo(アンドゥ) 上原有栖

会話も無い、互いの呼吸だけが聞こえる夜
ふたりはいつからか背を向けて眠るようになった
手元の四角い液晶に目を落とす「あなた」
隣にいるはずなのに、とても遠い
漏れた光は、雨のネオン街みたいに滲んでいる
「わたし」は今日も涙しているから

誰にメッセージを送っているの
取引先だなんてデタラメはやめて
もう知っているの
嘘をつく時、いつもチラと右上を見る癖
都合の悪いことは棚に上げて
つめたいんだね、なんてよく言えるわ

カーテンの隙間から光が差し込む夜明け
眠れなかった視線が一点を見つめる朝
長い間、固まっていた思考がほどけていく
久しぶりにとても気分がいいわ
どうして早く気が付かなかったのかしら
発見したの解決策
理解したの最善策

湧き上がる衝動を感じ、隣にいる「あなた」を見る
寝息で揺れる背中を強く抱き締めたあの日
確かにふたりはひとつになった
満たされていたと感じたのは、ただの幻

「わたし」は微笑み、ペンを握った
震える手でサイドテーブルのメモ帳に伝言を残す
I cannot undo what has already been done.
(やってしまったことを取り消すことはできない)
それからフッと息を吐いて、掴んだペンを首すじに突き立てた

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※{undo}:(今までの事を)元に戻す、(結果を)台無しにする、取り消す、ほどけるの意

※結末の解釈が様々に想像できる、読み手に委ねる詩を目指しました。その匙加減に試行錯誤しております。
今回は評無しで、読んだ感想を頂けると嬉しいです。宜しくお願いいたします。

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