みどりご 津田古星
妊娠中に二度入院して
延べ60日間
安静にしていなければならなかった
予定日より一月ほど早く生まれてきた子は
2524グラム
出産した翌日
初めて授乳室へ行くと
新生児室から移された赤ん坊たちが
横長のベッドに並んでいた
さてうちの子はどれだろうと
足首に巻かれた名前を見ていくと
この子か
確かに小さい
隣の子の方が可愛い顔をしている
こっちが良かったのに
でも
隣の子に指を吸われて
泣きもせずおとなしくしているお人好しが
うちの子なんだ
面白い
こら 隣の子
わたしの子の指を吸うんじゃない
6日後に退院
赤ん坊は賢かった
何故泣いているか分からないということがなかった
お腹が空いたときと
お襁褓が濡れたとき以外に
無駄に泣かない
母親の体力気力の乏しいのを
知っているかのように
母親をよく休ませてくれる
目を開けている時間が増えてきても
自分の手を動かして見ていたり
窓に映る木の葉がチラチラと揺れるのを
じっと見ている
子供はわたしより
やさしくて 穏やかで考え深かった
母親よりも
生まれたばかりの新生児のほうが
ずっとずっと賢いことを
大人はみんな気づかない