新月の踊り子 白猫の夜
夜の気配に包まれて
眠った私はゆるりと起きる
白い衣から濃紺の衣へ
黒い羽織を翻して
隠しておいた赤色の雪駄を
カランと鳴らして森へと走る
誰もいない場所へ
閑散とした静かな場所へ
ふわりと舞い始めた雪を横目に
真っ暗闇の森へと走る
そこはまるで広場のように
星が見守る洞穴のように
ぽかりと木々が口を開けて
私を天へみせてくれる
くるりと一回まわってみて
銀にキランと輝く刺繍に
雪駄は目を引くほど鮮やかに
遠い遠い西の方の
アンデルセンのカーレンではないけれど
踊るのはきっと彼女と同じくらい好きよ
誰にも邪魔されず
誰にも見つからず
ほしあかりのもとひとり舞うの
くるり くぅるり
てを伸ばせば ほら
星を掴めそう
ふわり ふぅわり
めを閉じれば ほら
歌がきこえる
るる るらら
るる るらら
大丈夫 だいじょうぶ
行儀にうるさいお祖母さまも
足を斬る木こりもここにはいないから
夜に安心して身を委ねて
るる るらら
るる るらら
ちゃんと帰る
きっとちゃんと帰るから
だからどうか朝の香りがしてくるまでは
わたしのままで過ごさせて!