トラネタリウム
天球儀に描かれた88星座。
そこを眺めていると
獅子、イルカ、鳳凰などが集まる
陸、海、空、幻想入り混じる森羅万象動物園だ。
髪の毛とか、コンパスとか
関係ないのも多いのに
88であらゆる動物を網羅するのは無理な話で
虎もそんな星座に含まれなかった
ひとつの輝きだ。
百獣の王ライオンと並び立つ虎。
虎がライオンが開けた場所で
群れで暮らすのに対して
藪の中などでひっそりと
単独で暮らす種族故に
目立たないのかもしれない。
繁みの闇から、鋭く光る緑がかった灰色の瞳
逞しい体躯が鋭く奔流する。
その狩りの様は彗星の力強さをたたえる。
目指すべきは星なのか。
誰もが星を目指すのか。
なぜ星を目指すのだろう。
どれの答えも知らない。
母の背中を追う、小さな虎。
その背中を見失うことは命を失うことだ。
母はその背中で子に生きる術として狩りを教える。
虎の狩りの成功率は1割程度。
後ろに子どもがいることで
成功率は、より下がる。
そんな厳しい世界の束の間に
母の虎が寝そべるところに
戯れる子供の虎の姿が見受けられる。
星座の犬と熊のように。
チェロ奏者によるインドの虎狩りがはじまる。
宮沢賢治氏の『セロ弾きのゴーシュ』より
題名だけ生まれていた曲。
力強い調べを奏でられる。
虎という言葉を調べるも
どれも強さや怖さが強く出ている。
人間にとっては虎は畏怖の存在だ。
そんな存在だけれどレッドリストでは「危機」。
種の存続が危ぶまれている。
星にも寿命があるように。
絶滅したら星になるのか。
生きているうちに星になりたい。
強い強い輝きを放つ星に。
でも、器に限りがあるからこぼれてしまう。
詩歌という星になり
言葉という星になり
音楽という星になり
絵画という星になったけれど
星座にだけは描かれなかった。
一頭としては孤高の輝き故に
他の星に結べなかったのか。
緑がかった灰色の瞳は
命の星を一点に見つめているようだ。
満天の空の下、人間の親子。
子供の指が星をなぞる。
トラ!
そう活発を体中に表したように強く指を差す。
ひとりの中に強く眠る星座のように。