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スレッドNo.5636

評、4/25~4/28、ご投稿分。  島 秀生

この雨が終わると、いよいよ暑くなってきそうですね。
この夏も、無事に乗り越えられますように……。


●白猫の夜さん「花筏の恋」

湖面に落ちたたくさんの桜の花びら、花筏の美しさ・はかなさに寄せる想いを、擬人化して、恋人同士のひとひらの恋と重ねて、表現してくれています。
女性の魅力も匂わせながら、とても上手に描いてくれていますね。

概ねいいと思うんですが、ラストの3連が、それはそれで魅力的ではあるのですけど、このあたりは全部「春」との絡みで行ってしまってて、「桜」とのダブルイメージが切れてしまっているので、終連あたり、何か桜に因むものを入れたいですね。「一輪」でも「花びら」でもいいので、なんか入れたいですね。
後ろ2連の案ですが、たとえば、

春を
この暖かな春を
あなたに渡してあげる

ねぇ その手のひらいっぱいの春をおもって
いつかこの春に帰ってきてね


こんなのはどうでしょう?
いっぱいの花びらを渡した感じにしてみましたが・・・。

あと細かいところ。
・初連2行目
「見つめるのだから」 → 「見つめるものだから」
でしょうね。

・2連3行目の「向日葵」なんですが、桜の話をしてるだけに、他の花は避けたい。
無難には「太陽のような」でしょうけど、他に案があれば、それでも。
とにかく「向日葵」は避けたい。

以上のところ、ちょっと一考してみて下さい。
でも概ねOK。魅力的に書けてましたよ。秀作プラスを。


●温泉郷さん「オレンジの帯」

たぶん・・・ですが、辞書のことは以前から記憶にあったんでしょうけど、

開いたページには
ところどころ
鉛筆の書き込み
そのころ わたしは
書き込みのあるページを
探しては 繰っていた……

ここの部分を初めて思い出したんじゃないでしょうかね。辞書の記憶から、さらに一段深く入らないと出てこない記憶ですからね。
あれ、ここ、どこかで見たぞというデジャブーに出会った時のような、電気が走るような感覚じゃなかったですかね。想像ですが。

あるいは、これ全部を一気に思い出したんだったら、凄いな。
それだったら自分で故意に押し込めてた記憶かもしれません。詩行にある「ひどく長い空白が続く」の感覚は、それを暗示するものかもしれません。

「ビニールカバーの下のオレンジ色」がキーなのか、辞書を手に持った感覚が似ていたのか、あるいはお父さんに何か聞きたいことがあったのか。逆に、お父さんに何事かあったのか(いわゆる虫の知らせ)。
いろいろ要因が想像されますが、ともあれ、大切なことを思い出したのは良かったことだと思える。「いいことがあった」で、いいんじゃないでしょうか。

社宅や、辞書の転がり方がリアルだったので、多少はあっても、概ねは本当のことなんだろうなあと思って、読みました。
皆それぞれ、いろいろありますね。

ちょっと不思議な話ですが、オレンジの帯をきっかけに、大切な想い出を思い出した、というお話でした。繋がってますよね、ちゃんと。
名作を。


●雪柳(S. Matsumoto)さん「問い」

ふむ、いいですね。よーーく練られてます。完成度が高いです。
若い時は、歳を経るほどに穏やかになれるもんだと思ってましたが、なかなかそうはいかないもんですね。
重いものも積み重なってきますし、寝覚めも悪くなったりですね。あらためて人生ってなんだろ?と思ったり、生命や人類の営みとは?という謎は謎のままだったりです。

各連、すごく気合いが入っています。それぞれに読み応えあり。とりわけ終連はいいですね。思考も情感も深いですし、ラストもとても美しいです。
「最初に陸に上がった太古の生き物」も、うまく再登場させました。
テーマがかなり大きいところに行っちゃったので、ホントは着地させるのがすごく難しいんですが、終始、自身に照らしながら進め、遊離することなく、上手にまとめてくれました。
名作&代表作入りを。

こまかーいところだけ言いますね。
・2連初行、「目覚めの時は」にすると、もっと別の大きな意味に取られかねないので、ここは素直に「目覚めの時間は」にしておいて方が、意味がズレないと思います。
・3連初行、これはタッチミスでしょうけど、「遠く」の後ろに「に」が抜けてます。
・3連終行は、

失くしたもののゆえなのか 新しく得たもののゆえなのか

の方がいいと思います。

・4連5行目ですが、

誰かによって命あるものに刻み付けられ  は、
→ 命あるものによって刻み付けられ

で、いいような気がします。

あとはOKです。以上の点、一考してみて下さい。


●相野零次さん「出会い」

これね、人物Aと人物Bを、どちらが言ってる部分か、連ごとに自分で「A」か「B」か振っていってみて欲しいんだけど、これ、かなりややこしいよ。

一つの考え方が、荒い口調(A)か、おとなしい口調(B)か、で人物を分けるやり方だけど、末尾「なんだい?」の口調でくくると、1~3連まで全部「なんだい?」があるので、全部Aということになります。
で、4連がB。問題は次で、5連はAに見えるが、もしかして6連もAではないのかな? 
だとしたら、ここは、ややこしくするので、連分けしちゃダメですね。
また、

僕は気に入らないなあ
君のこと さっきから何でもわかってるみたいなこと言って
なんだか神さまみたい

と、ありますが、さっきからしゃべってるのはAの方だし、わかったふうに非難してるのもAなので、神さまみたいなのは=むしろAだと思うんですが、
Bはうずくまったり(2連)、ひざをすりむいたり(3連)してるので、その様はとても神様には見えない。

こうして分けて考えていくと、この詩、連ごとにどっちがどっちなんだってところで凄く迷うので、確信もって読めない、というのが正直なところです。
キャラがちゃんと区分できてない感じがする。
1~3連を読んでもらうと、自分と自分が自己問答してると読めるのだけど、自己問答してる段階で、登場人物はすでに2人いるので、もしかしてそこにもう一人登場させてるのだとしたら、登場人物は3人になってしまい、(ちゃんとキャラをかき分けられる技量がないと)3人が交錯して、たいへんややこしいことになってしまう。

私の意見としては、この詩は自己問答の2キャラだけで着地させたほうがいいと思う。
アダムとイブはおもしろいけど、現状ではちょっと無理があると思います。

大作なので、もうちょっと推敲してみて下さい。

全体の話と切り離して、1~3連に関しては、とてもいいと思う。
驚くほど強烈に責めているのが印象的。そこに関しては会話調もしっかり書けているし、とりわけ選択肢を並べたててるところが、すごくいい。

とりあえず、そこをもって秀作としておきます。
本作は大作なので、もうちょっと推敲してもらったら、まだ良くなれる作です。


●aristotles200さん「集団意識と個人の尊厳」

うーーん、誠に申し訳ないんですけど、これは詩というより論述文ですね。 論説をやっているところか、もしくは倫理・哲学の世界で読んでもらった方がいいと思います。そっちがこれを出すべき正当な場所だと考えます。論じたいのであれば、論じる場に出されるべきです。

短く切りさえすれば、なんでも「詩」だというのは、悪いんですけど大いなる誤解です。詩は「人間」を書くところなので、生きている人間(もしくは生きていた人間)が、詩の中で具体的に動いていなければいけません(五感の動作を含む)。詩は「論」ではなく、概ねのところで「感情」や「情感」を書く側のものです。逆です。具体的な場で、且つ感情の延長線として思考に入ることはありますが、そこを抜きにして終始「論じるだけ」というのは、ちょっと「詩」の場のものではないですね。出される舞台を間違えておられる(良い・悪い、ということでなくて、提出先の間違いがある)と感じます。

例えば図書館においても、大きな書店おいても、内容によってジャンル分けや棚の区分がされてると思いますが、その区分で考えてもらって、適したジャンルで評価してもらって下さい。短いから、という形態の話ではありません。

もしも、論が3分の1以下で、個人の具体的な出来事や情感が書かれてる作がありましたら、またご投稿下さい。


●上原有栖さん「ブラザーフッド」

兄のようであったとはいえ、実の兄弟ではないようですから、「友情」という呼び方でいいのかな?と思いますが、
何があったんでしょうねえー??? 金銭トラブルがあって巻き込みたくなかったか、人生を変えなきゃいけないと思い違う世界へ行ったか、それなりの年齢の方であれば、入院するとか、介護のために田舎に帰るということもあります。また逆にこちらが気がつかないところで相手に迷惑がかかるようなことをしてしまっていたか、等々いろいろなことを考えてしまう消え方ですね。
事情は不明のままですが、いなくなった今も、また現われるのをずっと待っている作者(もしくは主人公)の、大切な親友を思う気持ちがひしひしと感じられる詩です。
いいですね。ステキな情感です。

どっと歳を食ってから、また再会できるといいですね。何事もなかったかのように、お互いけろっとして、また話せるといいですね。
今は、相手が幸せであれと、祈るばかりです。
(おっと、マルボロ吸うなんて、すでにいいトシかもしれん。本作はもしかしたら創作なのかもしれませんが)
秀作を。

ところで気になるのが「ブラザーフッド」というタイトルです。
たぶん英語のもともとの意で使われてるんだと思いますが、なにしろ有名な映画ありますのでね。映画と混同して見られるのは、避けたいところなんです。
案ですが、詩の最後に注釈で、

*ブラザーフッド・・・・・・「brotherhood」。兄弟愛、もしくは兄弟のごとく親密な連帯を意味する。

こんな感じでつけとくと、映画に因んでないことが明らかになって、いいかなと思います。

編集・削除(編集済: 2025年05月10日 06:08)

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