狂っちまった世界 相野零次
鉛色の弾丸が僕の常識という世界を撃ち抜く
世界は嵐のように反転し、人々は笑いながら狂い咲く
100点満点のテストは真っ赤に染まり、
ブレザーの制服は宇宙を彷徨う
学校という社会では先生が率先して
大人のズル賢さについて講義している
生徒たちはカンニングペーパーをあちこちに貼りながら
黒板に愛の言葉を綴っている
お母さんが今晩の献立について考えるのを諦めたとき、
お父さんは浮気相手とピクニックの準備をしている
僕はといえば未来への旅を始めるためにヘリコプターをチャーターした
異常を感知したブタ型ロボットが
核ミサイルの発射コードを大統領のパソコンに送り始めた
もうすぐ世界は終わる
しかしこの狂った世界の何を異常と呼べるだろう
赤ん坊が子猫を飼いたいと駄々をこねるのは
間違っているのだろうか
青空からパラシュートが群れをなして
黒いカラスを追いかけるのも当たり前のことだ
けれど僕は未来に行くのはしくじったので
核ミサイルの発射コード入りの大統領パソコンをハッキングして
コンピューターウィルスをありったけ送り込んだ
まだまだ世界は終わらないのだ
お母さん、今夜はピザにしよう甲子園球場が埋まるくらいの
お父さん、あなたは昨夜首をくくったはずだ
上司に裏切り者が誰かを依頼されて
あなたはいったい誰なんだい?
僕、僕は誰なんだろう
どこへ行くんだろう
そろそろピザが焼き上がるから
愛とは何たるかについてみんなで話し合いながら夜更かししよう
そのとき真っ赤なトマトが爆発して
みんなはモッツァレラチーズになってしまった