憧れ(一人暮らし Ⅱ) 樺里ゆう
一人暮らしというものは
幼い頃の憧れを
思い出して
かき集めて
今更 叶えていくようなものかもしれない
最初に買ったのは
ブリキでできたポンポン船と
水中花だった
社会人一年目
港町に住んでいた頃
次に転勤した町では
虫入り琥珀の標本を買った
思い切ってペルシャ絨毯も買った
旅先でひょうたんも買った
今の町に移ってからは
百均で小さなガラスドームと 赤い薔薇の造花を買ってきて
『星の王子さま』や『美女と野獣』に登場するような
オブジェを作ったり
はにわやテトラポッドの置物だとか
乳香や聖母のイコンを買ってみたり
イースターエッグを作ったりして
とにかく歯止めがきかない
十代やそれよりも小さかった頃の私が
確かに好きで 欲しかったのに
夢想するだけで手に入れようともしなかったものたちを
今の私は掴むことができる
自分で選び
自分で決めて
自分で手に入れることができる
一体それが何になると
言われようとも
(ほんとうは誰もそんなこと言わないのだけど)
それが何より大事だったのだ
私にとっては