潮風の匂いと血の記憶 aristotles200
私は何処にいるのか
深い霧に囲まれ、周囲は何も見えない
私は何処に立っているのか
古びた、海賊船の甲板に立っている
左手は義手、右眼は義眼らしい
側に控えるは、腹当を着けた髭もじゃの男たち
大砲の砲弾の音が左右から聞こえる
甲板は、荒波で濡れている
海賊船の船首を、右方向に旋回させる
左舷に並ぶ大砲が敵船を捉えた、轟く砲声
右舷、敵船からの砲弾がマストを擦る
接舷戦闘、用意、取舵一杯、右舷の船に突撃
衝撃、刀を抜いて叫ぶ、乗り込むぞ!
夕暮れ、潮の匂いが立ち込めている
何故、古びた時代の戦いの記憶が
鮮やかに脳裏に甦り、言葉を紡げるのか
一族は代々、四国、伊予国の生まれとか
一つ理解している、これは血の記憶
何処でも、何処までも、戦う人である
理由がある限り、守るべき人がいる限り
後先など知らぬ
生きている限り戦う
そういう国と民であると、潮の匂いが告げるのだ