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スレッドNo.5694

夏生様 評のお礼です。  荒木章太郎

 本作「隣で眠る君に」を丁寧に読み込んで下さりありがとうござます。佳作と評して頂きとても嬉しいです。
 主人公は年老いてゆくごとに、さまざまな喪失を重ねていく中で、重病を患う妻の看病を体験します。そんな時に、なぜか幼少期に母や父に手を引かれて、蛙や虫が鳴く畦道を歩いて銭湯に通った事を思い出します。当時の父母は何も話してくれなかった。だけど、今は、当時の自分が父や母の孤独感を敏感に受け取っていたことに気づきます(看病することで、ようやく妻との関係に目覚めたのです)。だから、かつて「目覚めることを知らない夜」の中にいた彼は、悲しみのあまり言葉は失ってしまったが、死に向かう妻よりも朝、早く目覚めることができた。言葉を持たなかった頃の自分を思い出して、妻との関わりを改めようと試みます。「目覚めることを知らない夜へ向かう妻」に対して、目覚めることを信じて交流し続けることが愛だと理解するのですが、まだ不十分です。
 私自身が、作品を通じて人と触れ合うことを恐れ、読み手(他者)に解釈を委ねていることに気づきました。これでは、主人公の愛は妻に伝わらないでしょう。やはり鳴いているだけではだめで、言葉を失っても、なお言葉で表現しようとする心根が必要だと思いました。

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