ロックンロールケーキ 荒木章太郎
ロックンロールケーキだ
棘のついたものばかり
がっついて飲み込んできたから
喉が爛れて歌えなくなった
ロックンロールはあきらめた
権力はフェイクに丸めこまれた
敏感で繊細な世界で
どかどかシャウトする度に
君を傷つけてしまう
今の時代、傷を塞ぐのに
バンドとは言わないらしい
俺の頃はロックンロール
バンドエード
言い方は違えど
暴力に対して暴力で
やり返していた
歪みと騒音が
人をイラつかせてしまう
閑静な住宅街で
シェルターは造られた
学校や教会や寺院が
避難所となる
墓地は聖地として
お金を稼がなくては
いけない世界では
壁ではなく傷が問題となる
静かに寛げねば
周りに迷惑をかけてしまう
傷をなめ合うことで
真実はカーペットの下に滑り込む
ぶつかり合いは騒音とされ
声を上げる者は
空気の読めないやつになる
黙ることでしか
愛を示せなくなった
ロックンロールは死んだか
いいや、まだ役目はある
心だけを揺さぶるのだ
ロックンロールケーキだ
くるくるとした優しさで
世界のてっぺんを目指す
「結局はとんがるのね」
君に呆れられた
ロックンロールケーキだ