MENU
1,218,843

スレッドNo.5711

洗濯  静間安夫

休日の朝、
ため込んだ洗濯物を
まとめて槽に突っ込む
スイッチを入れると
洗濯機がしゃべりだす

「オセンタク、オツカレサマデス。
 コレカラ、センタクヲハジメマス。
 センザイリョウハ、2杯デス」

指示どおりに
洗剤を入れてやり
漂白剤も加えて
蓋をしめる―
すると
水音が聞こえ
やがて回転し始める

ウィーン、ウィーン
カッタン、コットン
チャプチャプ、チャプチャプ

ウィーン、ウィーン
カッタン、コットン
チャプチャプ、チャプチャプ

たっぷり張られた水が
渦潮のように回転し
一週間分の汗と汚れを
洗い流してくれる

しつこい染みがついた
ワイシャツも
漂白剤のおかげで
真っ白になる
酸素系だから
他の服の
色落ちの心配もない

ウィーン、ウィーン
カッタン、コットン
チャプチャプ、チャプチャプ

ウィーン、ウィーン
カッタン、コットン
チャプチャプ、チャプチャプ

この単調な音の繰り返しを
休日の朝に聞くたびに
あぁ、やっと一週間が
終わったんだな…
しみじみ、そう思う

だから
洗い流しているのは
なにも 身体の汗や
汚れだけじゃない

一週間の間に
こころが ため込んだ
営業回りや
クレーム対応の
疲れも苦労も
後味の悪い記憶も
一緒くたに
洗い流しているのだ

たしかに
昔の洗濯みたいに
井戸水や
掘割の水で
ざぶざぶと
洗い流すわけじゃない

それでも
この洗濯機の
つつましい
水音を聞くだけで
何かしら
清々しい気分になってくる
目まぐるしい
一週間を乗り切って
ホットした気分になってくる

「オセンタク、オワリマシタ。
 フタヲアケテ、
 センタクモノヲ、トリダシテクダサイ」

了解!
それでは
洗濯物を干すとしよう
おかげさまで
今日はいい天気だ

アパートの窓を開け
物干し竿に
洗濯物を
一枚一枚
ていねいに
引き伸ばしながら
かけていく
初夏の朝の空気を
胸いっぱいに吸い込みながら

細い路地を見渡すと
あちこちの家やアパートで
洗濯物を
干している人たちがいる
「いい『洗濯日和』になりましたね!」
思わず声をかけたくなる

色とりどりの洗濯物が
さわやかな風にはためき
若葉の緑と
粋なハーモニーを奏でてる…

さぁ、干し終わった

午後は久しぶりに
入谷に出て
商店街で掘り出し物を探そう

その後は
銭湯でひと風呂浴びてから
行きつけの居酒屋に入ろう
酒と肴を楽しみながら
「いのちの洗濯」といこう

編集・削除(未編集)

ロケットBBS

Page Top