テトリス詩 松本福広
「明日の天気は晴れ 後 テトリスとなるでしょう」
食事中の味噌汁を吹き出した。
そんなことある訳ないだろうと
他のチャンネルを確認せずテレビを消した。
翌日になると四つのブロックが
それぞれ、正四角形、Sの字、Lの字を描いて
回ったり、左右に移動しながら
ゆっくりと降っていた。
ブロック一個分は小さく
意識しないと分からない。
隙間なく綺麗に長方形が作られると
積み上げられたブロックが消えていく。
道端には隙間だらけの
ブロックの積み損ないが転がっている。
完璧な配置のものだけが世界へと消える。
不完全なものは
そのまま くすぶったかのように
揃えられないままで形を残す。
局地的に私の上を降り始める。
揃えられないまま
積み上げるとゲームオーバー。
テトリスの雨で
埋め尽くされる、自分の詩。
与えられた環境が
私を待たないように
テトリスも速度を増していく。
世界へ消えたものは誰かへと届く。
残ったままの
私の言葉は
私にしか残らない。
消費されるに耐えうる
ブロックの積み上げ方を
私は知らない。
I(アイ)が降ることを祈るように待つ。
そこに当てはまる言葉を見つけられないまま
雑然と塊が積まれていき
私は埋められていくのだ。