つながり 津田古星
図書館でふと手に取った本
ぜひ読みたいと思ったわけでもなく
表紙とタイトルから
サラリと読めそうで
睡眠導入剤変わりにでもなればと
連れ帰る
目次を見て
興味を引かれた章から読む
あ これは今のわたしに必要な本かも
素直に人間の善を信じたいわたしに
力をくれる本だ
読み終わって
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懐かしい人が住む遠い町の名
この著者が教鞭を執る大学の図書館は
忘れたいと思っていた彼が
時折 利用すると言っていた図書館だ
登場する人たちの土地の言葉を
もう一度読む
きっと彼もこんな言葉で
家族や友人と語らっている
わたし達が東京や大阪で会っていたときは
標準語のアクセントで話していて
訛りもなかった
わたし達はお行儀良く
ちょっと相手と距離を置いて
話していたのかな
ふるさとの言葉で話してくれる関係になれなかった
遠く懐かしく忘れたい人の
ふるさとの言葉を
本の中でじっくり味わう
こんなふうに思いがけないところから
彼がひょっこり顔を出す
かすかにまだ繋がっているとしたら
「じゃったら、いつか会えるん?」