感想と評① 8/26~8/29 ご投稿分 三浦志郎 9/3
お先にすみません。
1 おおたにあかりさん 「オニヤンマ」 8/26
接客業でしょうね。物販店とか飲食店とか。時ならぬトンボの飛来に驚き不思議がる主人公です。
それもオニヤンマ!その大きさには「うわって」なるでしょうね。この詩はふたつのエピソードがあって、ひとつはトンボの事、ふたつはトンボの事を話してくれた人の想い出。僕は後者のほうが趣深い。「先祖が帰ってきた」と説明されていますが、それと同じ感覚で、おそらくはそのトンボが連れて、その人の想い出が帰ってきた、と見るのがこの詩は優しい。いっぽうでトンボの伝説が語られ、こちらもおろそかにはなっていない。すなわち心地よい両立です。終連はトンボと共に想い出もそうなった、の謂いでしょう。何気ないストーリーがあります。詩中「トンボ」で通してますが、冒頭のみ「とんぼ」なのは何か意味があるのか、どうなのか?ないとすれば、推敲で統一したほうがいいかも? おおたにさんらしく佳作。
アフターアワーズ。
日本トンボ界最大、王者。僕、トンボ大好き。だいいち、カッコイイし。スズメバチも食べるそうです。益虫。ホバリングするが退くを知らず、そのめでたさや。ナンバー2のギンヤンマもごひいきに……。
2 エイジさん 「貝がらと海の音(夏の夢想) 8/27
はい、トンボの次は貝がらです。夏らしくていいですね。当然のようにジャン・コクトーの名詩「耳」(堀口大学名訳)が思い出されます。エイジさんにもそこに基礎イメージがあったかもしれません。
コクトーの場合は主旨はあくまで「耳≒貝がら」ですが、こちらは実際の貝がらと海の臨場感です。
全体を包むロマン感にあって、2連。ここはおもしろい。ここに見る地図幻想はおもしろい。異彩を放ちながら詩に寄与する感じ。センスあり、読み応えあり。詩を引き締めています。「地球中」はあまり使いませんねえ。「地球上」でいいでしょう。終連のセリフはいいですねえ。それだけに終行はちょっと説明的で普通な印象です。むしろ終行削除でセリフだけで終わってもいい。解釈充分取れるでしょう。もしも、座りが悪いと思うならば「夏の幻聴」みたいな、短く印象的フレーズで締めるのも可でしょう。
さて、まとめです。割とありがちイメージなんですが、上手く料理されてると思います。その要因は2連の地図感と貝がらのセリフにありそうです。佳作です。上記、手を打ってもらって、より佳作と。
3 cofumiさん 「ナニガ大事ナノカッテネ」 8/27
この詩の主人公はけっこう幼いと感じます。小学生高学年くらいか? cofumiさんにしては異色というか、思い切った振り幅というか……。スパイダーマンはなんとなくわかりますが、2連の「ご飯と味噌汁」はどこから来たんだろ? 興味的疑問であります。3連はいいと思います。終行は子どもなりの自我があります。詩行が空想的に飛びやすいのは、子どもの持つ奔放な想像力からかもしれません。読み終わってタイトルも含め、考えてみる。この詩にとって「ナニガ大事ナノカ」が―すいません―僕にはちょっと見えてきませんでした。夜の空かも?「僕なりの世界」かも?佳作一歩前で。
アフターアワーズ。
どうでもいいことなんですが、虹の色って国によって違って、アメリカ6色、ドイツ5色だそうです。
4 荻座利守さん 「川向うの森」 8/28
冒頭佳作。この詩の導入として4連に書かれた漢字一字の自然を重視したいと思います。それぞれの自然界の論理、それがないまぜとなって森がある。すなわち、森はあらゆる自然界の属性の
ひとつの具現、そう見ることができます。その事が僕にとってのこの詩の収獲のひとつです。
その具現をこの詩は「森の思想」としています。ここまでで佳作の半分を担います。残りの半分は何か?人間との関わりにおいてのこの詩の立場でしょう。では、どういう人間の立場か?ここに詩は言葉を介在させます。森が持たない言葉を持って人間はアプローチしようとする。こうして、人間と森はゆっくり時間をかけ共生してゆくのでしょう。そんな主旨の詩と認識しています。この森との課題は詩人も一役かうことでしょう。そんなことも読んでいて感じました。
アフターアワーズ。
今回、ある詩集選考で、森のことを考える機会がありました。この詩はちょうど折りが良かったのです。ところで、森について惜しむらくは、海の思想が入らないことでしょうか。あ、ないものねだりでした(苦笑)。
5 さくたともみさん 「向日葵」 8/28 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。 よろしくお願い致します。
夏にありがちな天気雨か、大気不安定の大雨でしょうか。虹が架かったからやんだのでしょう。
「頭を垂れた~熱心な敬服」「重い重い~下を向くばかり」は、花の描写としては、ちょっと個性的でおもしろいのです。そこで向日葵です。「あら、お可哀想に」一語で向日葵の気分がよくわかる。
向日葵も色々な品種が出て、丈の低いのもあるんですが、これは昔ながらの、抜きんでた高さのもののようです。「奢れる者は久しからず」とまでは言いませんが、向日葵の得意の絶頂を軽やかに、愉快に書かれました。また書いてみてください。
アフターアワーズ。
僕らの子どもの頃は、(身長が低かったせいか)、向日葵はとにかく巨大で、不気味ささえ感じたことがありました。
6 暗沢さん 「晩夏の企て」 8/28 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。
よろしくお願い致します。
丁寧なご挨拶、ありがとうございました。タイトル、キメてますね。ですが詩の内容はわかりませんでした。タイトル晩夏に対する「来る時節」だから、これから来る秋のことに思いを馳せているようです。ただ、まだ暑さは続いているようです。
墨汁が出て来るので、初連は何か書道を連想させます。2連では「硯」とあるので書道のイメージは持続されていますが、次に「紅錦繡」とある。これは赤地錦の織物のようなものでしょう。ここの繋がりはわかりません。3連では日影に入って容器にきれいなインクを注いだ?インクとあるので、背景は現代のことを古語で書いた、そんな風に取れるのです。もしかすると、この3連は全く別のことを書いたミニ連作、そんな風にも推測できるのです。もし、返信がもらえるならば、解説してくれるとありがたいですね。(現代文で)また書いてみてください。
つづく。