雨を待ちわびて 上原有栖
乾いた空気を吸って吐いて
空を恨めしく仰ぎ見ます
そよぐ風は身体をくすぐりますが
腹の足しにはなりませんし
身体の水気は日毎に抜けていくばかりです
お隣さんも蓄えは少ないようで
「いやはやまったく お互い大変だね」
「おや 頭の先が黄ばんでますよ」
そんな小言を呟き合いました
このまま干からびるのは嫌なので
ユラユラ ユラユラ 願いを込めて
雨乞いのダンスを踊ります
わたしたちの祈りが神さまに届くように
風に合わせて揺れるのです
思いが伝わったのか分かりませんが
ゴロゴロ音鳴る黒雲が
天の先まで覆い拡がり
それから間もなく
ぽつりぽつり さらさら と
透き通った滴が落ちてきました
恵みをもたらす癒しの雫は
大地と 空気を 湿らせて
ひび割れた世界を潤します
萎んでしまった
か細いわたしたちも
しとどに濡れて艶めくのです
小さき寡黙な生命(いのち)の上に
慈雨の飛沫は心地よく
いつまでもやさしく降り注ぐのでした