ひとつになれない争いの窓辺で 荒木章太郎
あなたはいつも
言葉を濁してくるから
あたしは首を傾け
斜めに言葉を放ってしまう
できれば――ー
花火でしたいのに
火花を散らす弾道ミサイル
「優しさ」という名の
言葉の暴力
前後左右を組み替えて
言葉の意味が
放物線を描いて
すりかわる
(優しさって、何だろう)
あなたを見つめる
あたしの瞳に
テロップを入れることですか
無垢で、無邪気で、未熟な果実
むくむく膨らむ欲望を
悪意なく抱きしめる
こちとら遊びじゃないのです
あなたは肉を欲しがるけれども
あたしは――あなたの骨が欲しい
互いに輪郭をぼやかして
川になって混じり合おうとする
ふたりは ひとつになりたい
けれども
ふたりでなくなることが
怖いのでしょう
月も太陽も
地平線を越えて昇ってくる
あなたの祖国は
あたしの国の
国境線を越えてきました
窓の外では
争いごとが
絶えることはありません
緊急避難警報が
ふたりに戻る合図です