トンネル こすもす
五月のある日
天気もいいのでドライブに出かけた
行く先は有名な高原だ
街を離れ山に入ってゆく
新緑がまぶしい
山藤の花が咲いていた
目の前にトンネルが見えてきた
暗闇に覆われる
出口を示す光はない
オレンジ色の照明だけが前へと続く
走る音が壁に反響した
かなり長そうだ
トンネルの中は
私の車だけではなかった
かなり離れてはいるが
前と後ろに車はいる
何回か対向車ともすれ違った
それなのに孤島に一人だけ
取り残されたような気持ちになる
前へと続く明かりだけが頼りだった
しばらくすると
はるか遠くに小さな光が見えた
光はだんだん大きくなってゆく
トンネルを抜けた
鮮やかな緑の景色が目の前に広がる
窓を開けると風が心地よい
雲ひとつない空だ
それまで覆っていた孤独感が
白い日差しの中に溶けてゆく
さらに走り続ける
大きなカーブを曲がると
先には見渡す限り
高原が広がっていた