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スレッドNo.5793

ドの音で始まる世界  aristotles200

私は何回目の私なのか
繰り返し、私は私として私のパートを演じてきた
今日も、同く私であり、私らしく、私を演じ終え、自室に籠もる
ここは私たちの共有ルーム、様々な私の跡が残り、私を思い沈ませる
とある哲学書を開く、今日買った新刊でありながら、既に私が255回読み終えた印を確認出来る
ルールは簡単、裏表紙に爪で線を入れる
横は一、縦は十、○は百
私は、少なくと256回目の私であり、今、以降の私の結末は知りようがない

買っばかりの哲学書を開く
背表紙から、13の変数でページに爪数字があることに気付く
これは、初めての現象のはず、既視感を感じない
ノートにページ数と爪数字を、順に書き記す
奇妙な数字の羅列が、ノート1ページに埋まる
これは、過去の私のメッセージに違いない
何を伝えようとしているのだろう

私は毎日、数字の羅列の意味を探り続ける、暗号関係の書も大概は目を通した
しかし、判明はしない、あらゆる暗号解析を試みるも、全てが無意味な言葉の羅列でしかなかった

私は、この哲学書を初めて読む256回目の私である
こうして、歳を取り続ける
死を予感させる晩年になり、ふと気付く、この数字は音符なのだ、この数字は、ある歌を表している
私はピアノに向かい、楽譜通りに演奏する

その瞬間、全ての私は、鏡合わせで現れた
色々な格好をした私が見える
年齢も十代から老齢まで、統一がない
そうか、これは私の同窓会の案内なのだ
左方向は過去らしい、毛皮を着て笛を吹く私が見え、その横では宮廷服を着てヴァイオリンを手に持つ私がいる
右方向は未来らしい、宇宙時代、滑空次元、精神体の私も見える

私は右手をあげて微笑んだ
すると、全ての私が右手をあげて微笑んだ
私たちは理解した
永劫回帰とは、全ての私たち、その存在を共有することにある
私は、この爪印を残した私を私たちに尋ねる
私たちは、笑顔で私の方を向く
そうか、私が思いついたことにより
全ての私が共有したのだ

私の同窓会は終わろうとしている
左右、両端の私が消えていく
私は、力強く楽器を奏でる
完全8度(P8)、オクターブでドを鳴らし続けた
私たちの世界は、ドの音を様々な楽器で鳴らし続けた

気がつけば、私は一人、自室でピアノの前に座っている
私たちの同窓会は終わったのだ
そして、私はドを、低く鳴らし続ける

編集・削除(編集済: 2025年06月05日 08:15)

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