評、5/23~5/26、ご投稿分。 島 秀生
いま、幸せを感じる時はいつですか? と聞かれたら、
朝のパンの焼ける匂いを、ゆっくりした気持ちで嗅いでいる時、
と、答えてしまいそう。
(腹が減ってるだけかもしれません)
ぱりんこ×2と雪の宿×1を、交互に食べると、無限ループに入りませんか?
(腹が減ってるだけかもしれません)
月曜から梅雨入りしそうです。
今年はどこも水害が出ませんように。
●温泉郷さん「水銀の記憶」
教育論はさまざまあると思うんですけど、子供を叱っちゃいけないという人もいるんですけど、でもね、ゼロってわけにいかないというか、危険なものだけはしっかり教えないといけないと思うわけです。
例えば、歩き始めて間もないような幼児が、ガスコックをさわる、ライターをさわる、一人で交通量の多い道路に出る、一人で川のそばに行く、これらは取り返しのつかない危険をはらんでいるものなので、この場合は叱らざるを得ないというか、語気強くならざるを得ないというか、一発でしっかり教えなきゃいけないシーン(その時は無事でも、次はどうなるかわからないシーン)であります。
そういう意味で、体温計を割ったから叱るというのも、仕方がないものに思えます。水銀は危ないですから。
それにしても、水銀を触らせてくれたのは貴重な体験ですね。理科の実験の時間でも、児童・生徒には触らせんでしょう。そもそも誰も指で直接触ることなんてないと思います。今の時代にはちょっとないであろう、貴重な体験談ですね。
ていうか、かなり危険なことしてると思います。お二人とも無事で良かった。
水銀の球体になる性質、一つになろうとする性質。詩行からとてもよくわかります。詩行を読んで、すっかり忘れてたけど、ああそうだったと、むかしむかし先生がやってみせてくれたのを思い出しましたが、私の年齢でそれだから、今の人はホントに知らないんじゃないだろうか。
指でさわったことなんて、まずないことだし、水銀の性質について表現されてる部分も、知識としてレアで貴重なものに感じます。この詩、内容自体に価値がありますね。たぶん作者もそこを読ませようとしっかり書いてくれてるんだと思いますが、まさに、です。
それにしてもこのお祖母さんは、過去にも割れた体温計を処理したことがあるのか、ずいぶんと手際がよい。
また、最初の2~3連の、預かったものの、夏休みは長いから、だんだん不機嫌になってくるのもわかる。たぶん、自分のやりたいことが制限されているか、家計にしんどいものがあるか、そのへんでしょうけど。この2~3連もよく書けてるなあと思いました。
名作を。また、作品自体はあまり大きくない作なんですけど、内容の稀少性をプラスオン評価して、代表作入りとしましょう。
最後に、補足しますが、これは昔の話なので、今は水銀ものは正しく処理して下さいと、皆さんにお伝えしておきます。先月も名古屋市で焼却炉が止まり、焼却炉の熱を利用していた市民プールまで休場になるというトラブルがありました。
記事:「“水銀”を含む体温計や血圧計は可燃ごみで捨てないで! たった50グラムで焼却炉が約1か月半も稼働停止に」
もしかしたら、これにヒントを得た作品だったかもしれませんね。
あと、別件ですけど、たぶん4月下旬あたりから、お使いのアプリを変えられたんだと思うのですが、そのアプリは要注意で、改行時にリターンマークが抜けると、とんでもないことになりますので、ご注意を、リターン押さずにカーソルを下げただけの部分は、他ソフトに持って行った時に、改行されずに全部くっついてますので(他ソフトと互換なし、もっというとそれはデータとして不完全な状態だということです)、くれぐれも行替えする時に、改行マークが抜けないようにして下さい。
今回も、4連の1行目と2行目は、データとしてはくっついています。くれぐれもアプリ上だけの見た目に、ごまかされないようにして下さい。
●埼玉のさっちゃんさん「壁破る」
うーーーん、たしかに応募に踏み出すにはとても勇気がいったことだろうと思うんですが、ただ、「勇気」と「壁」は別物だと言いますか。特に「目の前にそびえ立つ壁」という言葉は、人生に数回ぐらいの大きな出来事に対して使う言葉に思いますし、簡単超えられないから「壁」なのであって、時には10年以上も継続的な努力を重ねて、やっと超えられるものに対して使う言葉に思います。その時の勇気は必要でも、一瞬で超えられるようなものに、使う言葉ではないと思いますよ。もしかしたらSNS上では「壁」が軽い言葉になっちゃってるのかもしれませんが、文学上や一般報道的には、ちょっと適さないでしょうね。なので、そこはちょっと抜いた方がいいと思えます。
その上で、順番変えましょうか。
スキマ時間に
楽しそうな事に
最近応募している
道が開けかれる気がするからだ
結果よりも応募することが大事
見ていてくれる人は
必ずいるのだから
怯むことなく突き進めば
必ず道は開かれる
何もしない後悔より
やって後悔する方がいい
いつも心に挑戦を
この順番にして、2連に分けた方がたぶんいいと思います。一考してみて下さい。
それと、前にも言いましたけど、なるべく長く書いて下さい。短い詩の方が技量が問われることになるので、実は難しいんです。
秀作一歩前とします。
●上原有栖さん「ことば」
おもしろいね。「ことば」を単に物体化してるだけでなく、オモチャと勘違いする見た目であること、見た目より尖ってて不用心に触ると刺さって痛いこと。実際、袖から見える腕にはケガの跡があること。ゴミのネットからはみだした部分をカラスがつついていること。あまりの悪臭に嘔吐すると、自分の言葉のかたまりが流れていくこと。などなど五感により具体的な形状が描かれていくとともに、そこにアクセスしていくのがいい。
また、このお話自体が、「見た目より尖ってて不用心に触ると刺さって痛い」「ゴミ捨て場に溢れている」「悪臭に嘔吐する」など、現代、とりわけSNSなどに氾濫する言葉に対する風刺に満ちている。単なる物体化ではなくちゃんとテーマ性を備えているのがいい。
なかなか執着のある書きっぷりも良かった。
加えていうと、側溝が流れるように、「雨上がり」の設定にしているのも用意周到でした。
うむ、いいね。名作あげましょう。
2点あります。まず1点は、最初のセリフのあと、「道行く大人に忠告されました。」ですが、「道行く大人に」と書くと、不特定多数に、複数人に見えてしまうので、変えた方がいいです。そのあとも会話が続くし、袖口も見るので、あとに話が続くことを思うと、「ちょうど通りかかった大人に」とか、特定の「一人」だとわかる言い方に変えた方がいいです。
あと、欲をいえば、全体もう少しゆっくり行った方がいいです。エッセンス立て続け状態なので。
それとこれはお願いですが、ひとマス空ける時は、必ず全角にして下さい。原稿って、元は原稿用紙のものなのです。半角というのは、パソコン上、WEB上だけでしか通用しないものなので、基本的には避けるようにして下さい。ここでの原稿はあくまで印刷物となる時を想定した正しい原稿で書いてほしいので、原稿用紙イメージで、全角のみを使って書くようにして下さい。(ただし英数字の半角については。そのままで原稿として許可されます)
●こすもすさん「海への旅」
水の循環については、詩の一部として触れた作まで含めると、少なからず書かれているテーマではあるので、テーマ自体の目新しさみたいなものは、正直ないんですが、で、あればこそ、この「水の星」地球のシステムとも言える不滅の同テーマを、自分流にいかに描くか、といったところです。
一ついうと、水のサイクルの話自体は、わりと知られたものであるので、ストーリー自体に驚きはあまりないので、ストーリーに頼らないことが肝要です。問題は、それを作者が雄大なものだと思うのか、人間生活に欠かせないものだと思うのか、作者自身が水のようでありたいと思うのか、その心のもとに描写するということが、大事なポイントになります。この詩にイマイチ感動が足りないのは、たぶんそのへんです。
その、作者が水に寄せる感動部分(どのような感動・情感を持って見ているか)が、書かれた表現からはあまり見えないので、「自分は水の何に感動してるんだろう?」ってことをいま一度考えてみられたら、いかがでしょう? そしたら、この詩に不足してるものが、少し見えてくるんじゃないかと思います。
と、改善希望を先に書いてしまいましたが、現状においても興味深いところはいくつかあります。
上流・中流・下流で魚を書き分けているところ。下流で高速道路が上にあることと、人と車の喧騒、中流での小さな町、店や家の点在、田んぼ。このあたりの風景の描き方は、とてもオリジナルでいい。たぶん具体的に思う場所があるのか、手短かだけどとても映像力があります。
そのあたり、とてもいいなと思いました。
全体、ミスらしいミスとしてはないんですけど、味が薄いのは先程述べた理由によるものだろうということで、一考下さい。
いちおう書けてはいるので、おまけ秀作を。
こすもすさんはタッチがキレイというか、詩風がキレイなのは、いいですね。