旅立つ日に 津田古星
梅雨明けの日
旅立つ母の棺には
庭のローズマリーの枝を
夏の日差しにも冬の霜にも耐えて
青々とした葉を茂らせる
我が家のローズマリーの枝には
七月 可憐な水色の花が咲いていた
耐え忍んで働き続けた人の一生を
今は肯うことができる
あなたの娘ゆえに
秋晴れの日
旅立つ父の棺には
茶の木の枝を
春には新芽を摘み 夏も冬も緑濃い葉を
父が守り育てた茶の木の枝には
十月 慎ましい白い花が咲いていた
野良に生き 地位も名誉も求めなかった人の一生を
今は誇ることが出来る
あなたの娘ゆえに
いつかわたしが旅立つ日には
わたしの棺には
誰が何を入れるのだろう
願わくは
わたしが幸福を願った人達から送られた
手紙の束を