国道16号線沿いのドーナッツ屋さん 喜太郎
国道16号線沿い 横に目をやると横田基地
歩く歩道の先には小さなドーナッツ屋
店先に鉄製の白いベンチが置いてある
太ったな初老の外国の方が
コーヒー片手にドーナッツを頬張っている
空はどこまでも青くて雲ひとつない五月晴れで
その風景は絵になるなと感じて その絵に加わりたくなった
僕もドーナッツとコーヒを注文してしまう
片手にコーヒーで軽く会釈をして隣に座り
ドーナッツをガブリと頬張る
柔らかくてふわふわしている雲のよう
独特の甘さが口いっぱいに広がり
口のや周りは粉砂糖 思わず笑顔になってしまう
それを見ていた彼が膨らんだ頬のまま可愛い笑顔で
少し砂糖の付いた親指を立てて
こちらに向ける
僕も思わずドーナッツを摘みながら同じポーズで返す
お互いに笑顔 美味しさには言葉なんて必要ないんだな
コーヒーのほろ苦さが
青空を眺める穏やかなひとときを演出してくれる
彼はやがて立ち上がり手を振り歩き出す
僕は思わず「bye」と言葉を投げかけていた
彼は振り返り「bye」と微笑みながら返してくれた
少しの間がありものすごい爆音と共に
目前の滑走路に軍用機が着陸する
目の前に国道とフェンスを隔てて基地があり
さっきまでドーナッツ屋に笑顔の可愛い彼がいたリアル
軍用機が着陸する外国の基地がある事もリアル
青空の下 基地もドーナッツ屋もこんな近くに存在していて
できる事ならこちら側の穏やかな日々が続いたらと
ふと考えながら残りのドーナツを頬張った
残りのコーヒーを口にした後に
はドーナッツの甘さより
コーヒーのほろ苦さが口の中に残っていた
心の中にも目の前の基地のリアルが
何故か苦味のように残っている
立ち上がり店主に頭を下げて五月晴れの下歩き出す
リアルとリアルの間 国道16号線沿いの歩道
空はどちらのリアルにも同じ五月晴れが広がっていた