白い鳥 温泉郷
義母を見舞って
静かな帰り道
馴染みの
公園のカリンの樹
妻がふと見上げる
ひとつだけ
Y字の枝に挟まっている
落下できずに
地上に落ちた仲間を見る
初秋の風が撫でていた
あれは可哀そうね
鳥は来ないのかしら
秋から冬
冬から春
カリンは
黄色から
褐色に
そして
斑に黒ずみ
やせ細り 縮み
Y字に かろうじて
くっついていた
白い鳥が
くればいいのに
5月の連休
彼女は
無言で
土を確かめるように
ゆっくりと
踏みしめて歩く
見上げると
枝のカリンは
新しい芽吹きとともに
消えていた
きっと
白い鳥が来て
きっと
土に落ちたわよね……