監視塔の上から 荒木章太郎
平均台の上で
アクロバティックに
振る舞っても
君は平均値に見える
監視塔の上からでは
君は、ただのデータだ
君の頭上に
一本のロープを渡し
綱渡りをしている男がいる
彼は正しいのか
悪者を探しても
俺の皮膚は反応しない
ああ――
植物だった頃に戻りたい
もっと感受性が豊かだったはずだ
いや、神経質すぎたのかもしれない
敏感肌で、泣き虫で――
強くあるためには
鈍感にならなければ
無神経にならなければ
死刑執行などできない
それでも、
秩序を守るという理由で
四角四面におさまり続けていると
このままでは
石になってしまう