誰もいない aristotles200
地表を鏡とせよ
その瞬間、180°展開が始まる
向こうに私はいる
ここは鏡像の世界、裏側の世界
くぐもった音、そこはかとなくする匂い
私以外、誰もいない
地面は透けていて、本当の世界の真実が見える
下を向いて世界を見てみよう
道を歩いている大勢の人
中身はー空っぽ、皮だけが歩いている
自分で考えない、考えれない
電車が定時に駅に停まるような
決められた、それだけのもの
ビル街が広がっている
誰も住んでいない
コンクリートの廃墟
見栄とか
踊らされた無機質のマネキンが置かれている
温もりはなく、底冷えする冷たさだけ
ひび割れた、マネキンの崩れる音が聞こえる
ガラスとコンクリートの巨大な墓標
道は森に向かう
樹木は、表も裏も変わらない
あちこちに化学薬品が染み付いている
汚染された世界にあらがう植物たち
剥き出しの地表に荒野が広がり
その上に
人工の、作り物の
自然が、薄っぺらく置かれている
沈黙と、大いなる存在の怒りが満ちている
ここは鏡像の世界、裏側の世界
透明な階段を見つけた
光の搖らぎで、全体が見える
遥かな天空まで階段は続いている
その先には、新しい世界があるのだろうか
今日はやめておこう
きっと、帰ってこれなくなる
中身のない、本質の失われた、人工の世界
何もかも、プラスチックで作られた
偽物の世界
いつから、こうなったのだろう
人間は、何処に向かっているのだろう
私は誰だろう
私は、再び唱える
地表を鏡とせよ
180°展開する
原色の世界に戻ってきた
どちらが、私の世界なのか
何処も居場所じゃない、そんな気もする
微かに記憶に残る、家族の笑顔
家へ、まだ、帰らねばならない
待っている人がいる限り
呼ぶ声がある限り
私は、私である