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スレッドNo.5818

静寂  人と庸

その曲がり角が隠している景色を見たくて
自身の不意をつくようにそこを曲がると
もう街の声は聞こえない

その道には
若葉を透いて非日常が差し込んでいる
風はスローモーションで吹いている

はじめて歩く道だけれど
過去に何回も歩いた道だ
目的をしらず進む道は
いつだってなにかを隠している

それが見たくて進むのだ

いつの間にか地面は舗装することをやめて
小さなお社をわたしに近づけた
箱庭のような境内で
ぐるりを木々がお守りしている

その一角の二本の木が
胴から切られ立っていた
一つはクスの木
もう一つはカエデの木

切られているのに立っている
切られているのに立っている

風が吹いても動かない
揺られる葉も枝もない

何万年も前からそうしてきたみたいに
何万年も後までそうしているみたいに

失ってもなお
ふたり
立っている

  ※

街の声が徐々に聞こえてくる
時間がふたたび秒針を動かす

隠されたものを見つけても
こたえがわかったわけではない

何万年も前からそうなんだろう
何万年も後までそうなんだろう

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