読まれぬ手紙 津田古星
斎場へ足を運び
同級生の名の下に儀告別式と書かれた
大きな文字を見て
ああ 本当にもう生きていないのだと
きっぱり言い渡された気がした
最後の別れの時
棺にそっと手紙を入れた人がいた
決して読まれることのない友への手紙
書かずにはいられなかったのだろう
そんな友人を持った彼女の人柄が偲ばれた
療養中に
「両親より一日でも長く生きるのが私の目標」と
言っていたのに 叶わなかった
病院へ行った帰りに我が家に立ち寄り
白い梅の花びらが散るのをじっと見ていた
自分の命を重ねていたのだろうか
それから半年あまり
彼女は49歳で逝った
棺の中に納められた手紙は
彼女に届いたと信じたい
それとも 肉体を離れた彼女は
もう人の感情を超越した世界に行ったのだろうか