魔法 鯖詰缶太郎
「前提」から
忘れられてしまった慈しみがあるように
呪文に縛られなかった魔法が
体温のある魔法があったんじゃないか
と 思うと
生活者は旅人になる
呪文は
罵倒や暴力になり
体内に比較的、解しやすい復讐器官を作り
呪文は
賛美や称賛になり
自分の守るものを増やして
うつくしいようにみえる蜘蛛の糸を
つややかにしている
(なぜか、一本にしか見えないあの糸の事だ。)
たとえば
しなやかな猫の背骨を
指先が深く潜って
とらえ、すべるように踊らせれば
魔法のほんの一部でも
なぞる事ができるのだろうか?
この旅をともに歩んでいく
杖に 肥料に 友に 骨身に
うたうたびに呼吸が
やわらいでいくような魔法に
なりえるのだろうか?
つかれはてて寄りかかる時の背中になる
魔法を心に灯す事ができるだろうか?