16.6%の明日 松本福広
リボルバーに装填された弾は一発分だけ。この拳銃のシリンダーには6発分装填ができる。引金を弾く。何度も弾いてきたが自分のこめかみに弾くのは初めてだ。初めて引金を弾いた時の重さが蘇る。唐突に自分にしか聞こえない叫びが蘇る。時間の経過を重さを感じたことなんてなかった。帰ってきたあの日から朝日が重い。
寝る前の日課だった。俺は生きていて許されるのか? 1/6の確率に命の価値を確認する。いつも指が震える。心臓がうるさい。俺にしか聞こえない声の主たちは……止まってしまった……いや、止めしまったのに。俺は帰ってきてから時間だけ経っているのに止まったままだ。
今日も無事だった。冷たかった血流が一気に温度を取り戻す。死刑囚の一日はこんな感じなのだろうか。
フィクションなんかだと都合よく最後の弾だったり、2回弾いてみせたりするのを見る。あの声が聞こえる時だけは六回とも弾きたくなる……嘘になる……自嘲。
今日も生きられた。生き残るのは「アタリ」なのか「ハズレ」なのか。酒に逃げられれば考えなかったのかもしれない。あの時、仲間と飲んだ酒はもう飲めなくなっている。開けた瞬間、血の香りがして開けられなくなったからだ。
アタリなのか、ハズレなのか分からない
唐突に1/6の確率をひいて
あの声は聞こえなくなった。