痛みは 荒木章太郎
痛みは俺の体を
蝕んではいない
新しい器官となり
感受性の根となる
静かに根を張り 胸を張る
痛み止めを飲み 温泉に入る
痛みは 悲しみに変わる
その根は 息をして
生きて 手を伸ばすように
あなたの根とつながる
他者の悲しみの言葉に
共鳴し 結び目になる
結び目が交わり
水を吸い上げ 言葉にする
言葉は文脈を育み
緑や黄色に色づいて物語になる
さらに枝葉となり
伸びて森になる
言葉にならぬ声が宿り
実を結ぶ
鳥達が森に集い実を啄む
根は羽となり鳥と交わる
傷ついた人々が森に集い
新しいむら(機関)を作る
人々は傷を言葉に変える
喜びも悲しみもうたにして
むらを続ける
俺は年老いて種を集めた
次のむらに種を引き継ぐ
息の根は止まり
土に帰還する
森は悲しみのうちに
暮れてくれた