あの雲
あの雲の
あの時の
あれは波
空の海
ひとり
波にのみこまれ
天から見下ろせば
あなたたち
ふたり
別々の場所で
見上げていた
あの時
あなたたちふたり
それぞれ感じた
ひとりぼっちが
静かに
激しく
うねる波を
あの空に
起こした
そして
わたしだけが
あの雲の見つけて
波に飲みこまれた
別々の場所で
同じ空の海を
見上げる
あなたたちふたりの
笑みの消えた顔を
うねる波の隙間から
見つけたのも
わたしだけ
お互いの存在を
知らぬまま
同じ表情で
同じ空の海を
見上げている
あなたたちふたりを
包もうと
わたしひとり
両腕を広げたら
新たな雲の波が
速く
または
遅く
押し寄せてきて
波打つ雲が
ひとつに
繋がった
その時
わたしは
見逃さなかった
雲に飲こまれたままで
雲の波に揉まれながら
わずかに
あなたたちの口もとが
にんまりと
動いたのを
そして
そのあとは
たぶん
この雲の波は
この空の海は
誰にも見つけらず
うねって
消えていくのだろう