一枚の写真
あなたの顔が
目に浮かびます
一枚の写真です
大きすぎる額縁に
閉じ込められた
ルオーの
小さな絵のようです
小さなあなたの顔は
太く 部厚く 塗られた
鮮やかな白で
かたどれています
瞳は 空洞で
僕のこころを
無限に はるかな 後方の闇に
誘います
顔の他の部分は
おそらく
濁った
灰色でしょう
狭い背景は
もっと暗い
灰色でしょう
それらは存在感の喪失の色のようでもあり
存在の色
そのもののようでもあります
額縁は
その
激しく対峙する
矛盾を
しっかりと
現実に固定しているものなのでしょう
あなたは
僕によって
存在感にまで抽象されました
存在感とは
愛のかなたにある
生への渇望ではないでしょうか
共に生きようとする人間の
最期の叫びは
それに向かって
発せられるのではないでしょうか
だけど
あなたが
僕に残した
一枚の写真は
僕の暗い 抽象などとは
全く無関係に
具体的な人間として
輝いています
そして僕は
おそらく
両方とも
人間の真実だと
思っています
だけど
僕の声は
決して
存在の高みには
達しないでしょう
悲しいことに
僕にはその力がない
あなたの存在の高みに
そのまま 叫びかけることは
僕には
できないでしょう
こんな風に ルオーの絵を抽象することを
媒介にしてしか
僕は あなたに
叫べない
ボクハ アナタニ
サケベナイ
だけど
うれしいことに
ここに一枚の写真があります
あなたの瞳は輝いています
それが
すべてです