孤塔 aristotles200
その性、人を許せない
自らにも厳しく、学識を究めようとする
氷の塔の様な
どんどん高くし、居住まいを正す
孤高を示す
市場の流れに親しむこともなく
世間からのズレを、内側からの鍵で答える
感情は分析し、冷徹に処理する
孤独を深める相は
日々、鬼気迫る
普遍的な存在は認める、しかし
この世に、期待することはない
立ち位置は
常に観察者、批判者にある
彼は世界を冷笑する
馬鹿どもめ、と
そして
氷の塔を、また一層高くする
※
細い氷の塔が、一本ある
高く、高く聳え立っている
入口はなく、扉は
内側から鍵がかけられている
コミュニティとは交わらない
誤解を恐れない
分かってくれなくても構わない
今日も、氷の塔を高くする音が聴こえる
独り、学識を究めようとしている
鬼、という言葉が浮かぶ
ある日、氷の塔は雲上に達する
祝う者など誰もいない
外界を見下ろす鬼は、感慨深げにいう
まだまだだ
と、塔は激しく揺れだした
重みに耐えかねた、低層階が崩れだす
瞬く間に、鬼は地表に落ちてしまった
鬼なので無傷
周囲を見回すと、氷の塔は砕け散っていた
全てを失った鬼は、既に老いていた
小さな庵を
塔の跡に建てた
近くの村の子供たちに、読み書きを教えつつ
そこで、死ぬまで暮らしたという
好々爺然とした物腰から
誰も、鬼とは気づかなかったらしい