7/15〜7/17 ご投稿分の感想です。 紗野玲空
お待たせいたしました。
7/15〜7/17にご投稿いただいた作品の感想・評でございます。
素敵な詩をありがとうございました。
一所懸命、拝読させていただきました。
しかしながら、作者の意図を読み取れていない部分も多々あるかと存じます。
的外れな感想を述べてしまっているかも知れませんが、詩の味わい方の一つとして、お考えいただけたら幸いです。
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☆「カップラーメン」 荒木章太郎さま
荒木章太郎さま、こんにちは。
御投稿ありがとうございます。
カップラーメンといえば「三分間」
手軽さを強調したコマーシャルを思い出し、コミカルな詩を期待しつつ、読み進めましたが…
いい意味でいつも期待を裏切ってくれる章太郎さんではありますが、今回の作品も、ラーメンを待つ三分間が、全く想像をこえた展開をしていくのに驚かされました。
カップラーメンという身近なものを軸に、人生の様々な局面〜幼少期の記憶、家族との関係、社会の動乱、愛と喪失、そして死と向き合う瞬間〜鮮やかに描き出した力作だと感じました。
カップラーメン一つで、人生の多面性を見事に表現されていることに感服しました。
カップラーメンは単なる食べ物をこえ、象徴として扱われていきますね。
人生の喜びや悲しみ、抵抗や諦念を「三分間」という時間枠に凝縮する発想が非常に秀逸だと思いました。
初連から引き込まれます。
この4行はかなり熟考されたのではないでしょうか。
「喜びも悲しみも三分間」というフレーズは、人生の刹那を象徴する詩文で、詩全体のトーンを決定づけているように感じました。
2連以降、ウルトラマンの戦闘時間やカップラーメンの調理時間というポップカルチャー的要素とそれを生み出した時代背景、そこからまた目まぐるしく変化していく時代の中に生きる作者の人生の刹那的な瞬間(様々な三分間)を重ね合わせ、深い哲学性を帯びていく構成が素晴らしいと思いました。
ノスタルジー、現代社会への批評、個人的な喪失感が織り交ぜられ、深い余韻が残ります。
とてもよく考えられた作品で、このままでも十分読み応えのある素晴らしい詩ですが、少しハードルを上げさせていただきますね。
詩の前半、特に家族や社会の動乱を描く部分ですが、テーマが多岐にわたり、やや散漫な印象を受けます。
例えば、「父は革新から保守に転向し」「母は自由と自立を求めて」といった行は、個々のイメージは強いものの、カップラーメンという主題との結びつきは、やや薄くなるように感じられます。
これらの部分を、カップラーメンに関連することでもう少し補強すると、より主題がくっきりするかと思います。
最後の2連は、評を控えさせていただきます。
この三分間には、胸が痛みました。私は何も言えません。
終連…短く、絞り出すように発せられた詩文。
一際切なく響きました。
素晴らしい作品でした。
御作、佳作とさせていただきます。
ありがとうございました。
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☆「風は吹いている」 喜太郎さま
喜太郎さま、こんにちは。
御投稿ありがとうございます。
「風」を人生の流れや環境の象徴として用い、自己の主体性や抵抗、諦念と再起といったテーマが繊細に描き出されている素晴らしい作品だと思いました。
風という自然現象を通じて、若さゆえの無垢な情熱、流されることへの気づき、そして再び立ち上がる決意を表現する構成は、読者にも前向きな心と勇気を与えてくれますね。
歌詞として、リズムをつけたら、素敵な人生の応援歌になりそうです。
「いつだって風は吹いていたんだ」という最初の一行が詩全体を貫く軸となり、過去の無知、受動的な生き方、そして主体性を取り戻す瞬間を巧みに繋いでいると思います。
「ただ自分の足で思うがままに走っていた」という若さの無垢な情熱は、誰しもが若い頃を振り返り抱く感情であり、身に染み透るように深い共感をもって読み進めることができますね。
やがて「風に身を任せ落ち葉のようにふらふらと流されるがまま」という受動的な姿勢に移行する流れは、人生の中で主体性を失いがちな瞬間をリアルに描写していると思います。
さらに、「今も風は吹いているんだと」という気づきから、「あえて追い風に向かって足を踏み出したくなる」「あえて抗ってみるか」と主体性を取り戻す展開は、希望と勇気を湛えた転換点として、詩に劇的な力を与え、読者にも力を与えてくれるように感じました。
人生の浮き沈みを自然な流れで表現し、読者にも自らの人生を振り返るきっかけを与えてくれる素敵な詩ですね。
「髪は乱れても心は乱れはしないだろう」という締めの詩文は、逆境に立ち向かう内面的な強さが感じられ、爽やかな希望を感じました。
十分に完成された作品だと思いますが、少しハードルを上げさせていただきますね。
「風のせいにしたり周りばかり眺めていたり気にしたり」という部分は、受動的な姿勢を表現する重要な行です。
しかし、やや抽象的だと思われますので、少し具体性を持たせてはいかがでしょうか。
街の喧騒や他者の視線など具体的な表現を補うと、読者の共感がさらに深まるかと存じます。
「やがて落ちゆく先が見えてきた時に気付く事があって」という行も、「気付く事」の内容を曖昧にせず、この気づきを具体的な感情や場面で補うと、主体性を取り戻す決意の重みがより際立つかと感じました。
ご一考いただけたら幸いです。
素晴らしい作品でした。
御作、佳作とさせていただきます。
ありがとうございました。
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以上、2作品、御投稿いただき、誠にありがとうございました。
それぞれに、素晴らしい作品でした。
十分に読み取れていなかった部分も多かったかと存じます。
読み違いはご指摘いただけたら嬉しいです。
来たる7月30日は立原道造の111歳の誕生日です(24歳という若さで旅立ってしまいましたが )。
私事で恐縮ですが、主宰する『夢みたものは』では特集号を組みました。
立原道造の詩と共にお手にしていただけたら嬉しいです。
猛暑が続きます。
選挙も終わりました。
「今も風は吹いているんだと」
「あえて抗ってみるか」
そんな心持ちで熱いカップラーメンをすすっております(詩は響きますね〜)。
皆様くれぐれもご自愛くださいませ。
紗野玲空