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スレッドNo.5998

宇宙人  荒木章太郎

ホルマリン漬けにされた
宇宙人が中学校の理科室の
床下から見つかったという
噂が広がっていた

肝試しにと
真夜中の中学校に
幼馴染の君を誘い出したら
「私は火星人だ」と
告白されて、理科室へ連れていかれた

君が嘘をついていると
証明できずにいるとき
僕の鼓動が遠くの音みたいに聞こえはじめた

「地球人はすでにドーパミン漬けにした」
と君は続けた
笑うつもりだったのに
喉が乾いて 何も言えなかった

僕は君の手を取って
「許嫁になる約束をしたい」と告白した
「こんな時に、ずるい」と
君は涙をこぼした

僕の頭の中で母の言葉が反芻している
(恋は病よ。父さんとは愛し合ってる。)
愛と恋とは 一体何が違うのだろう

個性はまだ確立されていない
人格や特性が 不安定に軋む音を立てる
僕らの成長は病にも似て
この宇宙との調和を乱していた

絶望が口を開けて横たわる季節
こんな青い闇の中に
僕らがいていいはずがない

二人は理科室を飛び出した
校庭の真ん中にある
樫の木の下まで
君の手を引いて走った

黒い闇には
天の川が浮かんでいた

星に誓うように
僕は言葉を続けた

「君を信じるために
約束したかった
僕を守りたかったんだ
君が嘘をついていると
決めつけた僕自身が
許せなかった」

見上げれば
銀河を横切る流れ星
それは一体 何の涙(意味)なのか?

涙の理由を
聞かずにはいられなかった

君が火星人であっても
僕は君を
愛せると思ったから

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